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あなたがきらいなあなたのめ
政宗は、自分の隻眼のことを好きではないらしい。以前成実にその事情を聞いたら、困ったように笑ってはぐらかされた。おそらく誰よりもそのことについてよく知っているのは政宗本人以外では小十郎なのだろうが、成実のあの態度を見てしまったら、もう誰かに訊くことは出来ないと思った。
誰だって、触れて欲しくない部分はあるものだ。
伊達の城にやってきて、生活にも慣れて、顔見知りになった武将達の中には、話し相手になってくれたりする者もいて。
いつきは一人きりではなくなった。特に小十郎と政宗は、忙しいのに時間を見つけては顔を出してくれる。城の者達も優しい。それでも、いつきにもその誰にも触れて欲しくない部分というものはある。それと同じだ。
小鍔に鮮やかな朱の紐。よく見れば時々、その眼帯は違っていた。政宗はよく洒落た着物や道具をこしらえていて、例えばそれが己の好きではない部分でも同じらしい。
それでも、一番馴染んだように見えるのは朱の紐を通したものだといつきは思う。
「政宗は、自分の目が嫌いなんだべか」
「・・・好きじゃぁねぇな」
複雑な表情。ああ、この人はきっと、捕われてしまっているのだ。そう思った。
劣等感の固まりのような見えない片目。己の嫌いな己の部分が露出している。それが嫌で堪らないのに、それから逃げることは出来なくて。一時気を紛らわせたとしても、それは一生つきまとうものだから、ふとした拍子に嘲るように、それは己をさいなむのだ。
「政宗がそれを嫌いでも」
おらは政宗のその目、嫌いじゃないだ。
傍に寄ってそっと手を伸ばしてみれば、許されたのか、政宗はじっとしている。それでもそれに触れてしまうことはいけない気がして、触れる寸前で手を止めた。
「それをおらに好かれるのは嫌かもしんねぇけど」
政宗の大きな手が、いつきの頭を撫でる。細められた片方の目が、少し寂しげに、それでも優しく向けられた。
「俺も、いつきのこのPlatinam blonde は好きだ」
柔らかい、月の光のようだ。と、小さな頭を撫でる。
こんな小さなLady にまで心配かけるなんてな。と、今度は寂しげにではなく、可笑しそうに笑う。それを見て、いつきも安心したように笑った。
「おんなしだ。おらもこの髪が黒かったらって、何度思ったかしんねぇ」
そうすれば、一人きりにはならずに済んだかもしれない。それを思うと悲しくなった時もあった。それでも今はこうして、政宗はそれを好きだと言ってくれる。
「おあいこだべ」
言いたいことが上手く言葉に出来なくて、それでも、伝わってくれろ。と、心の中で必死に願う。
貴方の嫌いな部分を私は好きでいるから。貴方が私の嫌いな部分を好きだと言ってくれるように・・・
それは多分、幸せなことなんじゃないかと、いつきは思うのだ。
本とかで政宗はずっと右目のことをコンプレックスに思っていたらしい。というのを見て、ふと思いついたのでした。
外伝は別に順番決まってる訳じゃないんですが、前回までの2作品と、今回もまだ本編では書いてないネタとの間の話。次の段階以上に入れば、他国武将なんかも絡んでくるかと。じゃないと色々と不都合が生じるので(苦笑)
それまではしばし、いつきと伊達軍の皆様との団らんで勘弁してください。
誰だって、触れて欲しくない部分はあるものだ。
伊達の城にやってきて、生活にも慣れて、顔見知りになった武将達の中には、話し相手になってくれたりする者もいて。
いつきは一人きりではなくなった。特に小十郎と政宗は、忙しいのに時間を見つけては顔を出してくれる。城の者達も優しい。それでも、いつきにもその誰にも触れて欲しくない部分というものはある。それと同じだ。
小鍔に鮮やかな朱の紐。よく見れば時々、その眼帯は違っていた。政宗はよく洒落た着物や道具をこしらえていて、例えばそれが己の好きではない部分でも同じらしい。
それでも、一番馴染んだように見えるのは朱の紐を通したものだといつきは思う。
「政宗は、自分の目が嫌いなんだべか」
「・・・好きじゃぁねぇな」
複雑な表情。ああ、この人はきっと、捕われてしまっているのだ。そう思った。
劣等感の固まりのような見えない片目。己の嫌いな己の部分が露出している。それが嫌で堪らないのに、それから逃げることは出来なくて。一時気を紛らわせたとしても、それは一生つきまとうものだから、ふとした拍子に嘲るように、それは己をさいなむのだ。
「政宗がそれを嫌いでも」
おらは政宗のその目、嫌いじゃないだ。
傍に寄ってそっと手を伸ばしてみれば、許されたのか、政宗はじっとしている。それでもそれに触れてしまうことはいけない気がして、触れる寸前で手を止めた。
「それをおらに好かれるのは嫌かもしんねぇけど」
政宗の大きな手が、いつきの頭を撫でる。細められた片方の目が、少し寂しげに、それでも優しく向けられた。
「俺も、いつきのこのPlatinam blonde は好きだ」
柔らかい、月の光のようだ。と、小さな頭を撫でる。
こんな小さなLady にまで心配かけるなんてな。と、今度は寂しげにではなく、可笑しそうに笑う。それを見て、いつきも安心したように笑った。
「おんなしだ。おらもこの髪が黒かったらって、何度思ったかしんねぇ」
そうすれば、一人きりにはならずに済んだかもしれない。それを思うと悲しくなった時もあった。それでも今はこうして、政宗はそれを好きだと言ってくれる。
「おあいこだべ」
言いたいことが上手く言葉に出来なくて、それでも、伝わってくれろ。と、心の中で必死に願う。
貴方の嫌いな部分を私は好きでいるから。貴方が私の嫌いな部分を好きだと言ってくれるように・・・
それは多分、幸せなことなんじゃないかと、いつきは思うのだ。
本とかで政宗はずっと右目のことをコンプレックスに思っていたらしい。というのを見て、ふと思いついたのでした。
外伝は別に順番決まってる訳じゃないんですが、前回までの2作品と、今回もまだ本編では書いてないネタとの間の話。次の段階以上に入れば、他国武将なんかも絡んでくるかと。じゃないと色々と不都合が生じるので(苦笑)
それまではしばし、いつきと伊達軍の皆様との団らんで勘弁してください。
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