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ことはじめ。
目の前に投げ出された銀の髪の束に、村長は目をみはる。美しかったであろうその銀の髪には、赤黒い染みが飛んでいて、それが何を示すものなのかは明白だ。
「それで不満なら、首を持って来させるか?」
威圧的な眼光。たった一つの目から放たれるそれは、明らかに目の前でうつむく彼等全てかかってもかなわないと、本能的に感じさせる。
「あんな子供が本当に首謀者だってのか?Ha!」
胸クソ悪ィ。と、吐き出される言葉に、俯いた者達は更にうなだれた。
「それで?他に首謀者はいねぇのか」
隻眼の男の隣、彼よりひと回りは年のいった男の低い声に、震え上がる。しかし誰も顔を上げる者はいない。
苦虫を噛み潰したような表情をして、男は主人である隻眼の男を見やった。
「政宗様。いかがいたしますか」
Shit!と、吐き捨てるようにつぶやき、政宗は息を吸う。
「そうだよなぁ。そういうモンだ。誰だって、仲間を売ろうなんて思やしねぇ。武器を取った以上、お前達は皆同罪だ。家族郎党、殺されたって文句は言えねぇ」
低く、呻くような声。すすり泣くような声もしてくる。それでも、彼等の誰もが動こうとはしない。
「自分の身が可愛い。家族が可愛い。ああ、賢い選択だろうよ。だがな」
うつむいて、誰も政宗を見上げようとしない。それでも、彼の眼光に射抜かれているような、そんな恐怖を味わっている。
「覚悟がねぇなら、侍に刀を向けるんじゃねぇ!少なくとも、あの子供にはそれがあった」
「家族がいねぇからとか、そんなことじゃねぇ。侍に刀を向ける意味を、首謀者を名乗る意味を、少なくとも、お前達よりは判ってた」
少しだけ、政宗の語調が静かになる。何か言いたそうな者達がいるのを見下ろし、苦々しげに舌打ちした。
「大将の首ひとつ。それでお前達を許して欲しいと、震えながら言ったあの子供に免じて、二度とことを起こさないなら、お前達を解放してやる」
ただし。と、再び強い光を宿らせる片方の瞳で、ぐるりと見下ろす。
「忘れるな。お前達は生かされた。鬼子と影で呼んでいた子供の命を踏みにじって。この村を、畑を、田を、護ったのはお前達じゃねぇ。あの子供だ。神の使いを生け贄にして、お前達は生きるんだ。神をたばかることが出来るなんて、思わねぇことだな」
行くぞ、小十郎。と、青く染めた衣を翻し、彼は背を向ける。その背を追おうとする者も、投げ出された銀の髪にすがる者もいない。
背後から聞こえるすすり泣きは、ただ助かったことを小さく喜ぶような声。誰一人として、たった一人の子供の死を悼んでいる様子はない。
「Shit!・・・胸クソ悪ィ」
彼等は侍ではない。ただ素直に、自分と家族の命を拾ったことに安堵し、喜んでいる。それは仕方のないことなのかもしれない。けれど・・・
「やりきれませんな」
「ああ・・・奴等の誰もが、親のない、見てくれの違うあの子供を振り向きもしない・・・なぁ、小十郎」
「はい」
「他と違う・・・異形・・・異質である。というのは、罪なのか」
一歩前を歩く主人の表情は、伺い知れない。けれど、小十郎には、痛いほど判った。
「だから、そんな無茶をなされたと?」
ああ。と、振り返った政宗は、苦笑いを浮かべる。ぽたり。と、白い名残り雪の上に、小さな赤い花が咲いた。
すべての始まり。
「それで不満なら、首を持って来させるか?」
威圧的な眼光。たった一つの目から放たれるそれは、明らかに目の前でうつむく彼等全てかかってもかなわないと、本能的に感じさせる。
「あんな子供が本当に首謀者だってのか?Ha!」
胸クソ悪ィ。と、吐き出される言葉に、俯いた者達は更にうなだれた。
「それで?他に首謀者はいねぇのか」
隻眼の男の隣、彼よりひと回りは年のいった男の低い声に、震え上がる。しかし誰も顔を上げる者はいない。
苦虫を噛み潰したような表情をして、男は主人である隻眼の男を見やった。
「政宗様。いかがいたしますか」
Shit!と、吐き捨てるようにつぶやき、政宗は息を吸う。
「そうだよなぁ。そういうモンだ。誰だって、仲間を売ろうなんて思やしねぇ。武器を取った以上、お前達は皆同罪だ。家族郎党、殺されたって文句は言えねぇ」
低く、呻くような声。すすり泣くような声もしてくる。それでも、彼等の誰もが動こうとはしない。
「自分の身が可愛い。家族が可愛い。ああ、賢い選択だろうよ。だがな」
うつむいて、誰も政宗を見上げようとしない。それでも、彼の眼光に射抜かれているような、そんな恐怖を味わっている。
「覚悟がねぇなら、侍に刀を向けるんじゃねぇ!少なくとも、あの子供にはそれがあった」
「家族がいねぇからとか、そんなことじゃねぇ。侍に刀を向ける意味を、首謀者を名乗る意味を、少なくとも、お前達よりは判ってた」
少しだけ、政宗の語調が静かになる。何か言いたそうな者達がいるのを見下ろし、苦々しげに舌打ちした。
「大将の首ひとつ。それでお前達を許して欲しいと、震えながら言ったあの子供に免じて、二度とことを起こさないなら、お前達を解放してやる」
ただし。と、再び強い光を宿らせる片方の瞳で、ぐるりと見下ろす。
「忘れるな。お前達は生かされた。鬼子と影で呼んでいた子供の命を踏みにじって。この村を、畑を、田を、護ったのはお前達じゃねぇ。あの子供だ。神の使いを生け贄にして、お前達は生きるんだ。神をたばかることが出来るなんて、思わねぇことだな」
行くぞ、小十郎。と、青く染めた衣を翻し、彼は背を向ける。その背を追おうとする者も、投げ出された銀の髪にすがる者もいない。
背後から聞こえるすすり泣きは、ただ助かったことを小さく喜ぶような声。誰一人として、たった一人の子供の死を悼んでいる様子はない。
「Shit!・・・胸クソ悪ィ」
彼等は侍ではない。ただ素直に、自分と家族の命を拾ったことに安堵し、喜んでいる。それは仕方のないことなのかもしれない。けれど・・・
「やりきれませんな」
「ああ・・・奴等の誰もが、親のない、見てくれの違うあの子供を振り向きもしない・・・なぁ、小十郎」
「はい」
「他と違う・・・異形・・・異質である。というのは、罪なのか」
一歩前を歩く主人の表情は、伺い知れない。けれど、小十郎には、痛いほど判った。
「だから、そんな無茶をなされたと?」
ああ。と、振り返った政宗は、苦笑いを浮かべる。ぽたり。と、白い名残り雪の上に、小さな赤い花が咲いた。
すべての始まり。
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