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徒然と小咄など。現在BASARA2メイン。 かなりネタバレや捏造もございます。御注意! あくまでも個人のファンサイトです。 企業様とは関係ありません。
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 捏造P3。主人公が女の子です。思いっきり捏造ネタなので、そういうのが苦手だったり不快だと思われる方は御注意ください。
 勿論ネタバレも思いっきりしております。

 ちなみにこのシリーズ(?)のカップリングは女主人公×荒垣先輩だったりします⋯ええ、先輩が右側で(笑)

 主人公の名前は焔野双珠(えにや・そうじゅ)です。読みにくいですが、本文中では仮名をふりません。ご了承ください。

「おや?」
 その青い部屋の主は、かすかに眉を寄せた。
 手元に降りてきたカードを受け取るように手をかざせば、それは胸の前で一瞬光を放ち、そして消える。己の中にそれまでなかった存在を確かに感じる瞬間。

 それが「ペルソナ」と呼ばれる存在だと教えられたのは、本当はずっとずっと昔。けれどその頃はどうやら漠然としすぎていたらしく、自分自身では知らなかった。ただ、懐かしいような不思議な感覚を覚えるあの人から、その名前を聞いていただけ。そんな朧げな記憶の片隅にしかなかったものが、今の自分と仲間達にとって、なくてはならないモノとなっている。

「どうやら、イレギュラーなようですな」
 ああそれで。と、納得がいく。新しいペルソナの降魔はもう何度も経験しているが、こういう感覚は初めてだった。
 どういった仕組みで行われるのかは判らないが、ペルソナはある一定のルールに従って合体を行い、別のものを生み出すのだという。その過程で、本来持ち得ない筈の力を継ぐことがあるのは知っていた。むしろそれを計算したりもしている。稀に珍しい能力を持っていたりすると、こうして不思議な感じがするのも経験済みだ。
 どれもこれも曖昧で漠然としていて、本当に感覚的なものなのだけれど・・・

「その力は・・・あまりオススメ出来ないようですな」
 珍しく部屋の主が難しい顔をしている。たいていのことには動じないような彼がそんな顔をするのも珍しい。くれぐれも、安易にその力を使わないように。と釘を刺されて、双珠は素直にうなずいた。



 RRRRRR・・・
 かかってきた電話を取れば、落ち着いた聞き慣れた声。だが、彼女が電話を寄越すのは決まって、満月が過ぎてから数日後。実際、タルタロスの探索も、現段階では一段落ついていない。こんな中途半端な時期に電話を寄越すのは珍しい。
「失礼致します。早急にお伝えせねばならぬことがございまして」
「うん。どうしたの?」
「先日降ろされましたペルソナの、あの力についてでございます」
 普段から表情を変えぬ彼女の声は落ち着いている。歌うような流暢なリズム、心地よい静かなその声に耳を傾け、言葉を聞いた。
「主が申しますには、あの力は危険なので決して使うことのないように。と・・・」
「へぇ・・・どうして?」
 ペルソナの力は多岐に渡る。支援するもの、自身の基本値を底上げするもの。そして、攻撃を行うもの。感じるに、例のイレギュラーな力は支援するもので、そうそう危険なものではないように思えた。それなのにそれが危険だから使うなという。
「あれは、奇跡の力の類に附随しますが、その中でも異例です。危険。としか申し上げようもないのですが・・・」
「うん。でも何がどう危険なの?」
「たった一度の奇跡・・・で、ございます。焔野様ならあるいは・・・ということもありますが、避けられる危険ならば、それを行うことは愚行。お判りでしょう?」
「僕なら・・・?」
「他の方なら、それを使った後の「死」は逃れられません。焔野様も、確実に。という訳ではございません」
「死ぬことが・・・ある。ってこと?」
「左様でございます」
 どうして自分ならもしかしたら。なのか、とか、思うことは色々あったけれど、双珠はそこで口をつぐんだ。どちらにしろ、その力の秘める大きさに混じって感じた「何か」はそれだったと理解出来た。それならば、彼女の言う通り、必要のない危険は侵さないに限る。
「判った。有難う」
「では、失礼致します」
 最後まで全く動揺もなく、彼女は必要なことを伝えて電話を切った。
「じゃあ何だって、こんな力があるんだろうね」
 ひとりごちて、小さく笑う。これも「特異性」というものだろうか。そんなことを考えて、振り切るようにかぶりを振った。
「まぁ、あの力を使いさえしなければ、問題ないみたいだし、ね」




 乾いた音と、誰かの悲鳴。あれは天田なのか、ゆかりなのか・・・
「う・・・そ、だ・・・」
 唇が、舌が乾く。喉が干上がる。スローモーションでもかかっているかのように目の前でゆっくりと倒れていくその人の姿を視線だけで追い、重い音を聞く。
 目と、耳と、口と・・・全てがまるで別々に働いているようだ。足はその場に縫い付けられたように動かなくて、ただ、倒れてしまわないようにと踏ん張っている。
 嘲笑うような声。泣き叫ぶ声。必死で彼に呼び掛ける声を聴いて、ようやくゆっくりと、周りに時間が戻って来る。
「シンジ!」
 真田の声。仲間達が口々に彼を呼ぶ声。それから・・・
「・・・は、ねぇ」
 低い、弱い声。
 まるでそのまま、消えてしまいそうな・・・
「だめだ・・・」
 そんなのは、ダメだ。嫌だ。何言ってるんだ、アンタは。一人で納得して、一人で満足して、一人で先に逝くというのか。そんなのは、ダメだ。許せない。許さない。

 いかないで、いかないでいかないで

 ペルソナ
 あれは己を、仲間を護るための力じゃなかったのか。自身を破滅させるような大きすぎる力。そんなこと、考えたこともなかった。
 最初はそんなこと考えてなかった。でも今は違う。この力は、護るためのものだ。誰かを、仲間を、大切な人達を護るために使おうと決めた。だから・・・

 ああ、そうか。だから、一度きりの奇跡・・・

 己の宿した不可思議な力の使い道を、この時ようやく知った。

 倒れたその人の隣に立つ。じわじわと地面に広がっていく染みは、まるで彼の命の終わりを示しているようで・・・
「・・・に、や・・・?」
 もう、顔を向けることも出来ないのだろうか。それでも、気配で感じ取ってくれた。それくらい、彼は皆を知っていた。仲間だった。
「勝手になんて、いかせてやるもんか」
 そっと、倒れたその体に覆い被さるようにして。
「何を・・・!」
 双珠!と、呼ぶ声がする。大丈夫。彼等がいてくれる。もしかしたら・・・なんて、今は考えない。もしかしたら、自分なら大丈夫かもしれない。と、あの青い部屋の住人も言っていたではないか。
「ダイジョウブ」
 一度だけ顔を上げて、心配そうに見下ろす仲間達を見て、それから、不思議と静かになっていく鼓動と、一瞬だけ、己の中に感じた違和感と・・・
 それが、背中を押してくれた。
 片手で体を支え、召喚器を構える。そうして引金を引けば、神話の神の姿を借りて現れるもう一人の己の姿。

「リカームドラ」

 囁くように、つぶやくように口にしたのは、奇跡の呪文。たった一度の、命をかけた力。
「え・・・」
 弱い声が腕の下からする。それを見下ろして、にやりと唇の端を上げて笑って。
「そう簡単に、逃がしてたまるもんか」
 はっ。と、いつものように、けれどそれはいつもよりずっと弱々しく、彼は笑う。馬鹿か。と言われた気がしたが、もうその時には、双珠の意識は真っ白な光に包まれていた。




「そう・・・ですか」
 病室のベッドの上、双珠は握り締めた己の拳を見つめる。そういえば、ここに来るのは何度目だろう。4月に入学してすぐと、それから、真田先輩のお見舞いと、そういえば、風花が仲間になったあの夜の翌日も、様子見のために一晩だけここに泊まった彼女を見舞って来た気がする。
 そうして今日、二度目のベッドの上。今度はさすがに、一週間眠りっぱなし。ということはなかったが、消耗は思っていたより激しい。
 あの力は、もう感じない。というよりも、あの力を宿していたペルソナも、あの瞬間に霧散したかのように消えてしまった。おそらく、また同じものを降ろしたとしても、あの力だけはもう二度と、手にすることはないだろう。
「美鶴先輩。それで、荒垣先輩は・・・」
「・・・隠しても仕方ない。正直に言おう。未だ意識は戻らない。昏睡状態のままだ」
「それは・・・!」
「大丈夫。体も脳も、至って正常なようだ。ただ、まだ目覚めない・・・」
 疲労とも違う。理由も判らない。勿論、他の人達のように影人間になった訳でもない。ただ、彼は眠り続けたままだという。
「むしろ、お前の方が危険だった。全く、無茶をしてくれる」
「スイマセン」
 いや。と、美鶴はきれいな笑顔を向けてくれた。
「礼を言っても言い足りない。荒垣を助けてくれて、ありがとう」
 明彦も、そう伝えてくれと言っていた。と、笑って、美鶴は手にしていた紙袋をベッドの上に置いた。
「今朝は、昨晩のことで集会を開く。もし参加するなら、これを」
「ありがとうございます」
 まだ朝も早く、面会時間ではないので、この病室に入れるのは今は美鶴だけだ。袋の中には、制服が一着入っていた。
「心配するな。彼のことは、桐条に任せてくれ」
 それよりも、先に体調を戻しておくことだ。と、厳しい言葉をかけられ、うなずく。
「眠り姫を起こすのは、王子の役目ですもんね」
 だから、早く復帰しないと。という双珠の言葉に、美鶴が珍しく目を丸くして、それから笑い出した。
「それじゃあ立場が逆だろう」
 いいんですよ。それで。と、双珠は笑う。
「そうだ、せっかくだから、今から制服、お願い出来ますか?」
「それじゃあダメなのか?」
 用意されたのは、昨晩まで双珠が着ていたものと同じ、男子の制服。入学時に間違って支給されて、男として認識されることの多かった双珠はいちいち訂正するのが面倒だからと、そのまま通していたのだ。
「似合わない。とは自分でも思うんですけどね。せっかくだし」
「判った。準備させよう」
 美鶴は手配のために部屋を出ていく。一人残された双珠は、そっと己の胸を押えた。

 あれは、何だったのだろう・・・

 あの時感じた、ペルソナとはまた少し違った感覚。まるで誰かが横から手を差し伸べてくれたような・・・
 もう、感じられない。けれどそれはひどく懐かしいような気もして・・・
 得られない答えを求めるかのように、双珠は静かに、目を閉じた。










 はい、無駄に長くなりました(苦笑)
 いや〜P3は主人公がダウンになっちゃうとそこでゲームオーバーだったから、そういえばリカームドラ(仲間を復活させる変わりに己が犠牲になる蘇生技)がなかったような・・・とか思ってね。
 荒垣先輩の例のくだりとかにね、絡ませたらどうかな?とかずっと思ってたのでした。P3は実際のストーリーだともう切なくてしょうがないので、色々と脳内補完です。

 ちなみに双珠なんですが、一人称が僕なのは家族の影響です。設定として、引き取られた先には兄5人。とかいうのがあるんで(笑)あとはあれです。内にあった彼の存在のおかげで、あんまり女の子っぽく育たなかった。というのとかね。いやもう自己満足ばっかでスイマセンでした・・・
 本当は他にもネタあるんだけど、とりあえずはコレを一度は形にしておきたかったので、自分としては結構満足です(待て)

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