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強くきれいなあの人の声
いち。と、長政さまは市を呼ぶ。
ずっと、兄さまの影にいた。同じ、昏く深い淵をのぞいている筈なのに、それすらもはね除けてしまうほどの覇気。振り払うこともせず、恐れることもなくそれらを踏みにじり、深い闇の淵を迷うことなく歩くことの出来る兄。
ひどく、怖い。
市はこんなにも、引きずられているのに。逃げられないのに。
引っ張られて、引きずられて、ずるずると、深い深い闇の底。ああまた、片足が沈む。髪を引かれる。腕を掴まれる。
心が・・・くろくそまってゆく・・・
「市!何をぼーっとしている!」
力強い声に、引っ張られる。
闇が晴れる。心が少しだけ浮かぶ。腕や髪を掴むあの手はもうなくて、足を引けば、もうそこは・・・
「そんな辛気くさい顔をするな。志気に関わる。それから、すぐに俯くな。ただでさえ悪い顔色が更に暗く、情けなくみえるだろう!」
良いか、お前はこの浅井長政の妻なのだぞ。もっとまっすぐ前を見ていろ。
つよい、つよい言葉。兄さまとは違う、真直ぐで、市の見ているあの深い闇の淵から、市を引きずり出してくれる。
「ごめん、なさい・・・」
長政さまは、こんなにも市を救ってくれるのに、市は何も出来ない。長政さまに御恩返しがしたいのに、どうしたらいいのか判らない。
「もういい!お前はそこで、大人しく待っていろ」
嗚呼、そんな・・・行ってしまう。
兄さまの妹。ではなく、市。と、市を見て言ってくれる人。大切な人。長政さまのためなら・・・
長政さまのためならば、今一度あの深い闇の淵へ。怖くて、目を逸らしていたあの世界へ、足を踏み入れても構わない。それで、長政さまの助けになるならば・・・
市は、何があっても、どんなことをしても、怖いだなんて思わない。
そのためなら、市と長政さま以外の者達の屍の山を築くのだって厭わない。ただ、長政さまが無事ならば。長政さまが市の傍にいてくれたら、もうそれだけで、市は幸せ。
だから・・・
「市も、お手伝い・・・します」
もっとこう・・・どろどろと書きたかったんですが失敗(汗)
長政さまとお市は仲良しだと思うんです。お互い不器用なだけで。
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