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徒然と小咄など。現在BASARA2メイン。 かなりネタバレや捏造もございます。御注意! あくまでも個人のファンサイトです。 企業様とは関係ありません。
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片倉小十郎奔走する。

 最北端の地を大きな犠牲も出さず無事におさめて城へと戻る。しかし埃を落とす間もなく、片倉小十郎にはやるべきことが山積みになっていた。
 まずは今回のことで連れ帰ることになった娘。いつきをこのままにしておく訳にいかない。
 捕虜ならそれなりの場所へ連れて行くし、対応のしようもあるのだが、今回は違う。最終的にどう扱うのかを決めるのは主人である政宗だが、少なくとも、客人・・・とまではいかずとも、それなりの対応が必要となる。
 そして何より、戦場ならともかく、この恰好のまま政宗の前に出す訳にはいかない。汚れた着物、政宗によって切られた髪はふぞろいで、銀の色も汚れてすすけてしまっている。
 城に戻ると小十郎は数人の侍女を呼びつけ、いつきと引き合わせた。ぼさぼさに汚れた髪と服。まだ幼い娘のこの姿に、侍女達はまぁまぁと目を丸くする。
「政宗様の前に出すんだ、きちんと見られるようにしてやってくれ」
 いつきの髪は見慣れぬ色で、最初は驚いた侍女達も、所在なげにしているその姿を見て、すぐに表情を緩める。
「それではまずはおぐしを整えて、風呂へ入れましょう」
「お腹が空いているのではない?お食事には少し早いけど、何かお腹に入れましょうか」
 呆然としているいつきをあれよあれよという間に連れて行く。それを苦笑して見送り、今度は別のところへと向かう。
 いつきを政宗に引き合わせるためには、それなりの格好をさせなければならない。しかしこの城には、いつきと同じような年頃の子供はいなかった。
 政宗にはまだ奥方がいない。城にいる侍女達もいつきより歳が上で、合うような物はないだろう。そうなれば着物はどこで手に入れればいいのか。
「某の娘が幼い頃に着ていた晴れ着でよろしければ」
 そう申し出てくれた武将に礼を言い、後日、代わりの着物をこしらえることを約束した。そうして受け取った着物を持ち帰り、侍女へと渡せば、何故か先ほどよりも人数が増えている気がする。
「片倉様、きっと驚きになりますよ」
 ウキウキとしたような声に、苦笑いするしかない。
 この城には侍女以外の女性がいない。ここには城主である政宗だけがいて、政宗の母親やその付き人達は、彼が伊達家を父親から譲り受けた時、一緒に別の城へと移った。そして政宗はまだ奥方を取ろうとしない。それどころか政宗を慕う部下達がこの城に集まってくる。自然と城の中は男ばかりになり、侍女達が着飾ったり磨いたりと、手伝うべき相手が全くいない状態が続いていた。
 そんなところに放り込まれたいつきは、彼女達にとって久しぶりに腕をふるえる機会だったのだろう。心の中で合掌し、小十郎はやりすぎないように。とだけ釘を刺しておいた。


 城に戻って埃を落とし、足を伸ばす。仮眠を取り、ようやく目が覚めると、外は陽が傾いていく頃になっていた。微かに夕餉の仕度をするいい香りが漂ってくれば、その匂いにわずかに頬が緩む。
 戦場で食べられるものなどたかが知れている。久しぶりにちゃんとした食事が取れそうだと思い、それから気付いた。
「Ah〜・・・仕方ねぇ」
 起き上がって体を伸ばし、それから台所へと向かう。そういえば、台所に入るのも久しぶりだ。
 もともと城主というのはそんなところに出入りはしないものだが、政宗は意外にも、そういう方面のことが嫌いではなかった。だからたまに台所に入り込んだりもするのだが、このところ、戦や何やで忙しくて、そんな余裕もなかったのだ。
 しかし今日ばかりは、手を出せる雰囲気ではない。凱旋ということで、宴の準備がされていて、台所はおおわらわだった。仕方なく使用人を一人つかまえて、一言二言、何か告げる。すぐに頭を下げて、その者は仕度に取り掛かるべく、台所の奥へと消えていった。
「・・・そういえば、小十郎はどうしたんだ」
 いつもならこの時分には顔を出していた筈だ。特にあの娘を預けたこともある。何かしら言ってくるものだと思ったのだが、一向に姿が見えない。
 まぁあいつのことだから、ちゃんとやってくれてるだろう。
 そう思い、部屋へと戻れば、件の小十郎が身なりを整えて待っていた。
「よぉ、少しは休めたのか?」
「・・・貴方がそれをおっしゃるか」
 深く溜息をついてみせれば、悪ィ悪ィと、悪びれた様子もなく笑う。
「で、あの娘はどうした?」
 戦場の陣でのやりとり以来、政宗はいつきの姿を見ていない。全て小十郎に任せておいたのだ。
 政宗が連れ帰るとなれば、色々といらぬ詮索をする者も出て来るだろう。何より、死んだ筈の少女が生きていると知れてしまっては困る。そういった理由から、上手くあの場所からいつきを移すようにと頼んだ。彼にとって一番信頼出来る小十郎に任せたのは、いつきに対する思い遣りでもあったのだろう。
「可哀想に、侍女達の格好の玩具になってましたよ」
「Ah〜そりゃあ・・・」
 大体のところを察したのか、政宗も苦笑いをする。伊達の侍女は、男連中に負けないくらいしっかりはっきりモノを言う。主人である政宗でさえ、時折言い負けてしまいそうになるほどなのだ。
「で、様子はどうなんだ?」
「御自分で確かめたらよろしいのでは?」
 微かに笑い、席を立つ。そうして隣の部屋へと続く襖を開けた。
「ヘェ」
「な・・・」
 そこに座っていたいつきは、目を丸くして政宗を見ている。
「what?何か悪いもんでも食ったのか?」
「・・・お侍さん、お殿様みたいだべ」
 呆気に取られたようなその台詞に、政宗と小十郎は吹き出した。
「そうか、殿様みたいか。小十郎、ちゃんとそう見えるらしいぞ」
「ええまったく」
 この方は伊達の当主、伊達政宗様だ。と小十郎が言えば、いつきの目は更に大きく見開かれる。どんだけ大きくなるのか見てみたいもんだ。と思ったが、政宗は口にしないでおいた。
「そんで、おさ・・・伊達のお殿様が、なしておらにこんな恰好させんだ」
 生まれて初めて綺麗な着物を着せられ、着飾られて、いつきは落ち着かないようにきょろきょろとしている。
 ふぞろいだった髪は整えられ、綺麗に櫛けずられて輝くばかりの銀の色をたたえている。その色に小さな赤い花飾りが映え、顔色を明るく見せていた。着物はやや子供向けながら、きちんとした物で、帯留めに可愛らしい飾りがついている。こうして見れば、やはりまだまだ幼い子供だ。
「なかなかCute なSnow rabbit じゃねぇか」
「きゅうす?」
「要は、似合ってるってことだ」
 途端にいつきの顔が朱に染まる。人からこうして正面きって褒められたことなどないのだろう。それを微笑ましく思いながら、小十郎はいつきをもう少し近くへとうながす。
「悪かったな、相手してやれなくて。どうだ?この城は」
 姿勢を崩して、まぁ楽にしろ。と言われて、いつきも遠慮がちに足を崩した。普段着慣れない着物は少し窮屈で、きれいだから汚してしまわないかと心配になる。
「みんな、あんまり驚かないんだな」
「・・・そうだな。馴れ馴れしくて嫌だったか?」
「ううん。ちょっと、びっくりしただけだ」
 言葉を探すようなその様子を政宗も小十郎も黙って見ている。この娘が一人きりでどんな思いでいたのか、それを知ることは出来ない。今はただ、全く変わってしまうことになるこの環境に慣れてもらうしかないのだ。
「おらはどうなるんだ?」
「そうだな・・・お前さえよければ、しばらくここにいるといい。まだ何をしたらいいのかなんて、判らないんだろう?」
 生きていく術を知らぬ娘を一人、放り出すことは出来ない。ここに連れて来たのはただの思いつきや気紛れではないのだ。
「まぁしばらくは客人としていればいい。どうせ滅多に客も来ない処だ。侍女達も、お前がいる方が張り合いがあるようだしな」
「だども、おらは農民で・・・」
「いーんだよ、この俺が、いいって言ってんだから」
 胸を張って言う政宗を見て、それから今度はおずおずと小十郎を見る。小十郎も、静かにうなずいてみせた。
「何がしたいのか、何が出来るのか、ゆっくり考えればいい」
 焦ることはない。と言うその声は優しくて、ようやく少しだけ、いつきは呼吸が楽になった気がした。






伊達軍は男ばかりで、お城の中には華が不足してます。お女中達は着飾りたいんです(笑)

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