かすがと幸村と佐助と・・・

こっち、こっち・・・こっちを向いて？

　彼女はいつだって、己の主人の姿ばかり追う。
　あの人の傍にいられますように。あの人を守れますように。あの人と共に居られますように。
　そんなの、本当なら許されないものなのは判っていても。

　見ているだけでいい。守るだけでいいなんて、バレバレの嘘、そんな顔で吐くんじゃないよ。
　馬鹿だねぇ、本当に。



　あの人はいつだって、己が主人が一番。
　誰よりも尊敬して、誰よりも見習いたくて、誰よりもあの方の祈願成就を願う。
　その為には己が傷つくことも厭わない。むしろ空回って迷惑なくらい駆けずり回ってくれちゃって、フォローに回る俺や、ひいてはあの方にまで心配や迷惑をかける。

　馬鹿なんだよねぇ、実際。
　それでも、真直ぐな瞳で前を見据えて、その前に立つあの方の背中から目を逸らすこともない。そんな姿勢を貫けるところはすごいと思う。



　なんかこうしてみるとさ、俺様ってすごい不毛じゃない？
　ちょっと気になる感じのオンナノコにはたった一人しか見えてなくて、仕えている主人は、こっちに迷惑かけまくるクセに、まったくそのことに気付いてなくて、やっぱり前をいくあの人だけを見てて・・・

　なに、この片思いの思春期少女みたいな構図。

　いやまぁ、俺様、そんな気は全然ないけどさ、でもなぁ。
　ちょっとだけ可哀想だとか思うのは、間違ってるのかな？


　なんとなく溜息をついたら、無口な同業者に、慰められるように背中を叩かれた。


　あれ？なんかこれ、ものすごいかわいそうなひとの図じゃない？
　なんだかちょっぴり、切なくなった。

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アホな小咄をひとつ。誰からのフォローも得られず、しかもトドメは小太郎から（笑）