前田慶次

信心深くないわけじゃないけど

　神様や仏様を信じない。とは言わない。お天道様はいつだって、見ていてくれているとも思う。
　けれど祈ることは、頼ることとは違うと思うから。
　大人になって、そう気付いた。大切な者は自分で守る。そう豪語する叔父叔母の姿を見て育ったことも要因のひとつかもしれない。
　祈るだけじゃ、叶うことはない。祈ることは否定しない。ただ、それに見合う努力をせぬ者が、叶わぬからと文句を言うのはお門違いだとは思う。

　ただひたすら、神様に祈ったのなんて、一度だけ。

　願いは叶うことはなく。ただ、それでも、彼の人が遺した言葉を刻む。
　自分から見て、それは幸せなことではないと思う。けれどあの人は、それでいいと微笑んだ。
　それを悲しいと思うのは、そりゃあ手前勝手なことなのかもしれない。でも・・・

　それでも俺は、あんたに生きて、笑っていてもらいたかったんだよ。


　妙に感傷的になるのは、こんな季節だからかね。と、空を見上げてひとりごちた。

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天を仰ぎ、彼の人を想う。