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※双珠ルートで10月4日以降ネタ。
許されるのなら何度でも。
許されるのなら何度でも。
何度頭を下げて、数え切れないほどの謝罪の言葉を並べて・・・それで失われたものが戻るというのならば、どれだけでもそうしよう。
二度と顔を上げるなと言われても、永遠にその口を閉じていろと言われても。
けれど、例えそうしたところで戻らぬものは、どう償えばいい?
実際に同じ立場を味わった訳じゃないけれど、似たような経験ならある。それは実際には己と繋がるものではなかったけれど、それに近い感情を抱いていたのは確かで、それを失った友を誰よりも間近で見てきているのだ。
もともと無理を言っていた。同じ力なのに、彼等のように安定しない。それが己の心の海に棲むモノだと言うのなら、己自身すら制御出来ぬ自分はどうなのか。
ヒトの心配なんてしてる場合じゃないだろう。何度、思い通りにならぬ力に憤り、そうやって己の中の己を責めて。どうして彼等は強くあることが出来るのか、羨んだところでどうにもならぬものを、心のどこかで、羨んでいたのかもしれない。
皮肉なものだ。あの経験以来、持て余し気味だった力の制御が出来るようになった。もっとも、力づくで押さえる術を覚えただけだ。
足りない力をクスリで補い、己がもっとも嫌悪する己を押さえ付ける。それが自身の命を縮めるものだと判って、少しだけほっとしたのも本当。
許される訳がない。許されてはいけない。そんなことは判っている。だから・・・
俺は、己の命を削ることで、それを購いだと・・・
「荒垣さんは、深く眠っています」
「うん」
「何やら思い出しているのでしょうか」
「すごいねアイギス。そんなことも判っちゃうんだ」
「なんとなく・・・ですが。こう、荒垣さんの上に、収まり切らない思考がぼんやりと浮き上がって見える感じがするであります。これは、コロ丸さんが発言している時と似ています。それよりももっとずっと、ぼやけていて、ほとんど輪郭も判らない状態ですが」
「ああ、そうか。そういう仕組みなんだ」
無機物である筈の機械仕掛けの躯を持つ彼女に、超状現象のような説明をされるのはなんだか不思議な感じだ。
「馬鹿だよね」
「何がでありますか?」
「誰よりも許されたいと思ってるのに、この世の誰よりも・・・それこそ天田君よりも、自分自身が許せないんだよ。きっと」
「・・・?」
命張って、かっこいいなんて思うなよこのやろう。そんなことしたら、天田君によけいな引け目を負わせるだけじゃないか。あんただって充分苦しんでるのに。大体、あんたがどうにかなったところで、天田君のお母さんが戻って来るわけじゃないんだから。
「天田さんが許してるのに、許されないのですか?それなら荒垣先輩は、今度は誰に謝りたいんでしょう?」
謝るべきヒトなんて、もういないのに。
「そうだね。まずは目を覚ましたら、僕に謝ってもらおうかな」
散々心配かけて、心臓が止まるような思いをさせて。
「では私も謝ってもらいます」
なんで?と訊ねれば、彼女はしごく真面目な顔でのたまった。
「双珠さんの命を危険に晒しました。私は貴方を守る為にいます。そんな貴方の命をおびやかした荒垣先輩は処刑であります」
処刑って・・・アイギス、最近美鶴先輩に似てきたねぇ。と笑えば、光栄です!と、びしっと敬礼で返された。
うんでもそうだね。まずは目が覚めたら、皆でそうして罰を与えて、それからおかえりなさいって、両手を広げて迎えてあげようね。
その時には少しばかり力がこもってしまうかもしれませんが、問題はないでありますね。
微かに聞こえる呼吸の音。ただ深く眠るその人が、少しでも優しい夢を見られますようにと、心の中で祈りながら・・・
祈るべき神々の姿を借りている己の中の己を思い出して、小さく笑った。
双珠ルートはこの後とかもちまちまネタがあるので、機会あったら小出しにしていけたらいいな〜とか。
設定が完全にオンリーワンな自己満足P3なんですが、万が一にも気に入ってくださる方がいたらいいな・・・とかいう小さな野望があったりなかったり。
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