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それを口にするのは、ひどくはばかられる。
「大好き」と、何のてらいもなく言える彼女を羨ましいと思う。
好きとか嫌いとか、そりゃあ結構そういうものに左右される方ではあるけれど、実際国を治める身ともなればそうそう心のままに。というわけにもいかなくて。
更には、相手がいけ好かなかったとしても、利用するとかしないとか、利害や何かを考えてしまう自分がいるわけで・・・
だから、何の損得もなく、ただ素直に、好きなものを好きと言えるのを羨ましいと思う反面、それを口にすることが出来ない己の腑甲斐無さを思い知って苦笑いするしかない。
そうだ、自分は怖いのだ。たとえ誰かを想ったところで、同じ想いを返して貰えるという保証もない。
同じ想いを返して貰えないことが怖い。突っぱねられるのも怖い。何より、否定されるのが怖い。
誰よりも己を愛してくれる存在である筈の「母」は、いとも容易く自分を見捨てた。
悔しいとか辛いとか、そんなことは後からで、とにかく最初は訳も判らず、ただただ、哀しくて。自分に至らぬところがあるからかと思って直そうとしたとしても、これだけは努力ではどうにもならなくて、だからそれがひどく恥ずかしく感じられて、自分が悪いのだと。自分だけが悪いのだとただそれだけで・・・
今なら判る。自分を支えてきてくれた人や幼い彼女の言葉が、それを示している。
どちらがどれだけ悪い。というのは正しい表現なのかどうかは判らないが、少なくとも、彼の人は母にはなりえなかった。というのだけは判った。
誰が悪かった訳じゃない。ただ、彼女にとって己の子とは、きれいな可愛らしいお人形に近いものだったのだろう。だから病で醜く変わった息子に対して、それまで可愛いと褒めちぎり、可愛がってきたことも全てがなかったことのようにしてしまえた。
まるで幼い少女のように、あの人はきっといつまでも、子供をそうとしか見られない。醜く、思う通りにいかぬ壊れた人形。かつては、表面上の気持ちだけのものだとしても「愛して」いたそれは、今は思う通りにいかぬ壊れたカラクリ。それが我が物顔でこうして生きているのを見るのは、さぞ面白くないに違いない。おまけに今は、それがこの地を治めているのだ。
やり場のない苛つきが見てとれるようで、政宗は届いた文にもう一度だけ目を通し、嘲笑を浮かべる。
「大好き」と、少女は素直に口にする。ただ人形を可愛がる少女とは違う。何がどう違うのかと言われたら上手く説明は出来ないが、違うと思う。
くりくりとした黒い瞳で真直ぐに見つめて、素直に好きなものを好きだと言える少女の姿が脳裏に蘇り、それだけで、少しだけ寛大な気分になれたのが不思議だ。
「大好き」だなんて、そういえばいつから口にしなくなったのか。そんなことをふと思いながら、政宗は筆を取った。
政宗の母親との確執っていうかまぁその辺りのネタで。単品だったら戦国でもいいんでしょうが、連載物のこれからとの関係ですので・・・相変わらず色々捏造です。
実際はまだ二幕の途中ですが、閑話休題ってことで、外伝みたいな小咄でした。
好きとか嫌いとか、そりゃあ結構そういうものに左右される方ではあるけれど、実際国を治める身ともなればそうそう心のままに。というわけにもいかなくて。
更には、相手がいけ好かなかったとしても、利用するとかしないとか、利害や何かを考えてしまう自分がいるわけで・・・
だから、何の損得もなく、ただ素直に、好きなものを好きと言えるのを羨ましいと思う反面、それを口にすることが出来ない己の腑甲斐無さを思い知って苦笑いするしかない。
そうだ、自分は怖いのだ。たとえ誰かを想ったところで、同じ想いを返して貰えるという保証もない。
同じ想いを返して貰えないことが怖い。突っぱねられるのも怖い。何より、否定されるのが怖い。
誰よりも己を愛してくれる存在である筈の「母」は、いとも容易く自分を見捨てた。
悔しいとか辛いとか、そんなことは後からで、とにかく最初は訳も判らず、ただただ、哀しくて。自分に至らぬところがあるからかと思って直そうとしたとしても、これだけは努力ではどうにもならなくて、だからそれがひどく恥ずかしく感じられて、自分が悪いのだと。自分だけが悪いのだとただそれだけで・・・
今なら判る。自分を支えてきてくれた人や幼い彼女の言葉が、それを示している。
どちらがどれだけ悪い。というのは正しい表現なのかどうかは判らないが、少なくとも、彼の人は母にはなりえなかった。というのだけは判った。
誰が悪かった訳じゃない。ただ、彼女にとって己の子とは、きれいな可愛らしいお人形に近いものだったのだろう。だから病で醜く変わった息子に対して、それまで可愛いと褒めちぎり、可愛がってきたことも全てがなかったことのようにしてしまえた。
まるで幼い少女のように、あの人はきっといつまでも、子供をそうとしか見られない。醜く、思う通りにいかぬ壊れた人形。かつては、表面上の気持ちだけのものだとしても「愛して」いたそれは、今は思う通りにいかぬ壊れたカラクリ。それが我が物顔でこうして生きているのを見るのは、さぞ面白くないに違いない。おまけに今は、それがこの地を治めているのだ。
やり場のない苛つきが見てとれるようで、政宗は届いた文にもう一度だけ目を通し、嘲笑を浮かべる。
「大好き」と、少女は素直に口にする。ただ人形を可愛がる少女とは違う。何がどう違うのかと言われたら上手く説明は出来ないが、違うと思う。
くりくりとした黒い瞳で真直ぐに見つめて、素直に好きなものを好きだと言える少女の姿が脳裏に蘇り、それだけで、少しだけ寛大な気分になれたのが不思議だ。
「大好き」だなんて、そういえばいつから口にしなくなったのか。そんなことをふと思いながら、政宗は筆を取った。
政宗の母親との確執っていうかまぁその辺りのネタで。単品だったら戦国でもいいんでしょうが、連載物のこれからとの関係ですので・・・相変わらず色々捏造です。
実際はまだ二幕の途中ですが、閑話休題ってことで、外伝みたいな小咄でした。
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