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※焔野双珠でアフターP3(双珠×荒垣)
色々捏造設定有りなのでご注意。
あとなんか…今回ちょっとこっ恥ずかしいかもです。
色々捏造設定有りなのでご注意。
あとなんか…今回ちょっとこっ恥ずかしいかもです。
たまたま触れたその手の冷たさに驚いたのを今でも覚えている。
アンダーは薄着だと言ってはいても、首元まで隠して、挙句、明らかに季節外れの厚手のコートをいつでも着込んでいた。少し猫背気味になって、ポケットに手を突っ込んで、そういえば顔以外に露出しているところなんてほとんどないんじゃないんだろうか。と、その時に改めて思ったのだ。
その理由は後になって判った。運び込まれた病院で、ようやく数日して面会した昏睡状態の姿。そこで初めて見たその腕や首に残る跡。肌の所々に染み付いたそれは、どれだけこの人が一人で耐えてきたのかを示していた。
打ち身や内出血の跡は古いものが消える前にまた新しいものが出てきていたし、それ以外にも、肌の色が全体的にくすんでいた。そして、痛みや苦しみを堪えるためだったのだろう。両腕に残る、掻き毟ったような爪痕…
触れてみた皮膚は少し荒れていて、弾力も同じ年の真田よりずっと弱い。そういった現実に、鼻の奥がツンとして、必死で息を飲み込んだ。
二歩ほど前を歩く背中を見る。今はあの頃のような厚いコート姿ではないけれど、まだ他の人と比べると、季節的には少し早いんじゃないかと思える長袖の上着。それでも上着一枚違うだけで、彼の周りにあった壁が少し薄れた気がする。
あのコートは、鎧でもあったのかもしれない。
痛々しい疵を隠すためだけではなく、必要以上に奪われる体温をかばうためだけでもなく、己と世間を隔離するための壁。
じっと、己の手を見つめる。少しだけ鼓動が速まった気がする。交代制のコロマルの散歩。一人で行くこともあれば、天田や荒垣と連れ立って行くこともある。二人で行くことだって結構あるのに、なんだか今しかないという気持ちに駆られた。
「手ェ、つないでいいですか?」
トントンっと軽く二歩、駆けるように近づいて、努めて落ち着いたように声を出す。様子をうかがうように眉間の辺りを観察すれば、少しだけ縦じわが寄ったように見えた。
「何企んでる」
嗚呼、これが順平がよく言う日頃の行いというヤツだろうか。別に普段だって、そうぶっ飛んだことをしているつもりはないのだけれど。
「企むとかじゃなくて、ええと…」
なんだろう。ただ本当に、衝動に駆られたとしか言いようがない。
「ちょっと、触れてみたいなぁ。と…先輩?」
天を仰ぐようにしたその様子に、首を傾げる。さてこれはまた何か間違ったかな?と思ったが、次の瞬間、差し出された手に面食らった。
「さっさとしろ」
あ、はい!と、思わず背筋を伸ばして、差し出された手に己の手を重ねる。ぎゅうと握られたその掌は、双珠のものより大きく、しっかりしていて冷たい。でもそれは、あの頃のような体温を奪われるような冷たさではなかった。
「おお…」
「なんだそりゃあ」
思わず感激して上げた声を笑われた。だって、ちゃんとあったかいんです。そう言いたかったのに、咄嗟に声が出なかった。
「おい、あんま動かすな。くすぐってぇ」
もぞもぞと、無意識に掌の感触を確かめるように動かしていたらしい。あ、また縦じわだ。なんて、荒垣の眉間を見てそんなことを思った。
「早く帰るぞ。冷えてきた」
「そうですか?まだ冬には早いと思うんだけどなぁ」
「寒いのは得意じゃないんだよ」
コロマルが同意するようにわんと吠えて、心得たように二人の間に立つ。繋いでいた手が離れて、少しだけ惜しいと思ってしまう。けれどそれは一瞬のことで…
「帰るぞ」
どうやらコロマルの位置に合わせて散歩紐持ち替えただけらしい。もう一度握られた手は確かに荒垣の言うとおり、少しだけ指先が冷たくなっている。
「はい!」
ちょっと振れば離れてしまいそうなほど軽く握られた手が、ひどく嬉しい。耳の辺りに熱を感じながら、双珠は並んで歩きだした。
…あれ、なんか甘酸っぱい気がしてならないよ?(汗)
もともとはもうちょっとシリアスか、笑って終わらせられるようなのにするつもりだったんですが、仕上がってみたらこう…とても、恥ずかしい話に…げはり。
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