忍者ブログ
徒然と小咄など。現在BASARA2メイン。 かなりネタバレや捏造もございます。御注意! あくまでも個人のファンサイトです。 企業様とは関係ありません。
402  401  400  399  398  397  396  395  394  393  392 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

※双珠ルートで11月4日。アフター話(双珠×荒垣)

 目が覚めてみれば、何故かひどくくたびれたように薄汚れた制服姿の仲間が、今まで見たこともないような顔をしてそこにいた。違和感があったのは、上着がこれまで見慣れていた男子用のブレザーから、女子用のものに変わっていたからだろう。ああようやく観念して思い切ったんだな。と、頭の片隅で思った自分がなんだか可笑しかった。
 良かった、先輩ちゃんと無事で、本当によかったよぅ。うろたえた震える声で、普段は澄ましたようなその表情が、見たことないほどにぐしゃぐしゃになって、泣きそうな、笑い出しそうな、可笑しな顔。必死だったのはその表情だけではなく、右手を握りしめる両手から伝わる力からも感じられる。
「わかったから、ちょっとは加減しろ」
 鈍りきって力の入らない腕。掴まれていない方の腕をようやく上げて、ベッドの上に身を乗り出すようにしているそいつの頭に落とすようにして触れる。ザラザラとした砂埃のような感触に、まだ続く悪夢を思い出した。
「悪かったな、勝手に一抜けして」
 久しぶりに触れた人の体温。ザラザラになった髪を、コロちゃんを撫でるようにしてやると、目の下を真赤にしたまま、その後輩はグスグスと鼻をすすりあげる。そういえばこいつはこんなにボロボロの姿でいるのに、他のやつらはどうしたんだろう。なんて思った瞬間に、廊下にいくつもの足音が聞こえてくる。
「荒垣先輩、あのですね」
「・・・おう」
 シャドウをもビビらせることの出来る静かな深い瞳。それが何やらひどく真剣に自分を見つめてくるのにやや気押され、頭に乗せたままだった手を離す。引こうとした腕を掴み、両手でしっかりと握られる。
「焔野、一人で突っ走るなと何度も・・・」
「双珠、お前足速過ぎ。皆心配するだろうが」
「あの、ここ病院だから、皆さんもう少し静かに」
 病室のドアが開かれ、途端に入り込んでくる賑やかな声。しかしそれらをはねのけるようにはっきりと響いた言葉。
「ぼ・・・私と結婚してください!」
 一瞬、水を打ったように静かになる。ドアから入り込んで来た仲間達は、ある者はノブに手をかけたまま、ある者は頭まで上げかけた手を中途半端な位置のまま、わずかな間ではあったが、時が止まったのを、皆が感じていた。
「いやいやいや!そりゃないっしょ!ていうか段階すっ飛ばしすぎ」
「馬鹿順平!そこじゃないでしょ」
「いや、なんというか…その、おめでとう?」
「真田サンそれ違う」
「あんたが言うな!」
「皆さんこんな夜中なんですからその、もう少し声を落として」
「ていうか何でこのタイミングで言うかなぁもう。美鶴先輩もいないのに~」
 なんとなく、疲れ果てて消沈していた仲間達の表情が、双珠の突然の発言によってわずかに緩んだようだ。しかし逆にその表情を強張らせたのはベッドの上の荒垣だった。
「お…っまえ。あのなぁ、冗談も時と場合を選べ」
「冗談じゃないです。本気ですよ」
 顔色は悪く、しかしその目だけは爛々と強い光をたたえている。整った顔立ちだけに迫力があった。手を握る力が更に強くなり、正直、女子とは思えぬ握力に、逃げられない。という切迫感に襲われる。これほど「怖い」と思ったのは、もう随分と前、美鶴を怒らせた時以来だろうか。
「恐っ!双珠恐いよ。完全に肉食獣の目だぞそれ」
「焔野さん、とにかく落ち着いて、一度手を離しましょう?ね?」
 順平と風花になだめられ、ようやく双珠の手から少し力が抜ける。
「スイマセン先輩。どうも何かあったらしくて」
「…お前達も、随分な格好だな」
 何かあったのか。なんて聞かない。ぶっきらぼうで、不器用な荒垣の優しさを皆もう知っている。
「オレ達より、美鶴先輩とアイちゃんのがよっぽど大変っすよ」
 へらり。と笑ってみせた順平の様子から、よくないことがあったことだけは判る。その横で、風花が小さく嗚咽を漏らしかけ、ハンカチで口元を隠す。そんな風花の肩をゆかりがそっと抱いた。
「明日は大騒ぎになる。ここも多少ゴタつくかもしれん」
 桐条の会長が死んだ。と、事柄だけを伝える真田の口調は淡々としてはいたが、その奥に後悔と自責の念が潜んでいるのを、長い付き合いの荒垣が気付かない筈がない。しかしそれには触れず、そうか。とだけ、唸るように漏らした。
「まだしばらくはゴタゴタが続きそうだ。病み上がりですまんが」
「いや。だがもう俺は…」
「いいです。大丈夫です」
 真田に代わって答えたのは双珠だった。見慣れぬスカート姿のせいだろうか、以前よりちゃんと「女の子」に見えるその姿は、なんだか不思議な感じだ。
「気にしないで、先輩はまず体を治してください。私達で何とかします」
 これは、私の問題でもあるから。と、言い放ったその瞬間、皆が少しだけ目を逸らしたのを荒垣は見逃さなかった。
「だから、先輩には、ここにいて、「おかえり」って言ってもらえたらいいんです」
「うわっ、さりげにすごいこと聞いた気がするんですけど」
「茶化さないの!」
「それで先輩?」
 ずいっと一歩近づかれ、ベッドの上で少し後ずさる。
「僕のプロポーズは受けていただけるんでしょうか?」
 まだ慣れないのだろう。「私」から「僕」に戻っている。しかし双珠はひどく真剣なのか、それにも気づいていないようだ。
「プロっ…あのなぁ焔野、いきなりそんなこと言われてもだな…」
「勿論、無理にとは言わないです。でも、将来的に伴侶を決める際に少しでも考慮していただけたらと思いまして」
 何年計画だよ。と、ぼやくようなつぶやきが順平の口から漏れたのは、皆聞き流した。
「あ~、その、だな」
「あ、オレ達外出てますんで。羽目外し過ぎない程度にお願いしますね」
 いらん気ィ使ってんな。と思ったが、言う前に順平は皆の背を押して部屋から出て行ってしまう。ドアの閉まる音が、何らかの運命を告げる鐘のようだと思ったのは初めてだ。
 まっすぐに見つめてくる双珠の顔をまともに見るのがはばかられる。こうも直球に、真剣にこられたら、曖昧な言葉で誤魔化すのは許されないような気がした。



「あたし達、こんなことしてる場合なのかな」
「焦ったって仕方ないだろ」
「だって…っ」
「じゃあ何が出来るってんだよ、今のオレ達に」
 深夜の病棟は普段以上に静まり返って不気味だ。少し声を荒げただけで、声が反響する。
「こんな時に不謹慎ですけど、焔野さんの気持ちも少しは、判る気もしますね」
 一度は失いかけた命。それを必死で繋いだのは双珠だ。そして今回は、助けることが出来なかった。何も出来なかったのを悔んでいるのは何も美鶴だけではない。
「あ、コロちゃんと天田くん、寒いのにロビーに待たせっぱなし…」
「天田がここにいなかったのはまぁ、良かったのか悪かったのか…オレ行ってくるわ」
 廊下に置かれた椅子に座って、ゆかりと風花は力なく微笑んでうなずく。しかしそこで、ドアの開く音がした。
「終わったのか」
 壁に背を預けていた真田が歩み寄れば、双珠はひとつうなずいて、まっすぐに顔を上げた。
「帰ろうか。皆疲れてるのに、寄り道してごめんね」
「つってももうモノレールとか動いてないんじゃね?歩いていくのはもう勘弁」
「もう何時間かすれば始発出ますよ」
「ちょっ、やだもう、これで学校行くとか信じらんない」
「とにかく、見とがめられる前にここを出よう」
 重い腰を上げ、皆は歩き出す。ロビーには、寒かったのか、体を丸めてうとうととする天田と、それに寄り添うようにコロ丸がいた。
「お待たせ。寒いのにごめんね」
 コロ丸は起き上がると小さく鼻を鳴らし、双珠の手のひらに鼻の頭を押しつけてきた。そこに可愛がってくれた荒垣の匂いを感じ取ったのだろう。
「小学生にはさすがに辛いか」
 まだ意識のはっきりしない天田を真田は苦笑して背負う。
「あ~、これ起きられっかな」
「どうせ順平は授業中寝てるじゃない」
 あまりにいっぺんに起こったあれこれを抱えながら、それでも皆、そうやって話をしながら帰路につく。それは残酷かもしれないが、生きていく上では仕方のないことなのかもしれない。
「そんで、荒垣サンは何て?」
 誰もが気になっていたが、聞けずにいたことをついに順平が口にする。皆何も言わないが、その耳が澄まされていることは一目瞭然だ。
「まずは段階を踏めって」
「それは…オッケーってこと?それともダメってこと?」
 恋愛ごとに対して、あまりいい感情を持っていなさそうなゆかりが一番に聞いたのは意外だった。
「私がそのつもりでいることは、頭に留めておくって。それで、それを踏まえてもう少しちゃんとお互いに向き合う時間が必要だって」
「ええと、つまり…?」
「…お付き合い、することになりました」
 「仲間」ではなく「恋人」として。ということなのだろう。おそらくは。
「…なんというか、こう、グループ内の奴らが付き合い始めるって、くすぐったくねぇ?」
「あんた、敢えて誰も言わなかったことを」
 ゆかりが小突くと、ちょうど打身のあったところだったのだろう、順平が大袈裟なくらいに跳ね上がって呻いた。その様子に、双珠も風花も笑う。
「無理だったら、「お友達から」くらいのつもりだったから、ラッキーかな」
「いやいや、そりゃいくらなんでも気ィ長過ぎだろ」
 むしろ「お友達」なんてすっ飛ばして「仲間」だったのだ。スタートラインが戻ってるじゃないか。なんて順平のツッコミに誰も反論しなかった。

 気の重くなることばかりで、不安はたくさんあって、それでも、今日ひとつだけ、この双珠のプロポーズ騒動が、皆の気持ちを少しだけ軽くしたのだった。





 11月4日(時間的には5日?)のあの出来事の後ってことで。この前段階の話が、双珠ストーリーの中で一番最初に思いついた話だったりします。何年あっためてんだって話ですね(汗)
 ようやくここにきて「双珠×荒垣」という単語が嘘じゃなくなったなぁ。と(笑)P3リアル年で、P3Pが出る前にこれだけでもちゃんと形に出来てよかったです。他のネタももう少し頑張る。

 ちなみに最初の頃から散々言ってますが、双珠は通常の男主人公ヴィジュアルを女の子にしてるイメージです。P3Pの女主人公はまた別にキャラクター立てます。

拍手[0回]

PR
天野宇宙にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする →
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新CM
[07/29 明都]
[12/06 天野宇宙]
[12/06 トモシ]
[06/27 東篠 永]
[06/11 NONAME]
最新TB
プロフィール
HN:
天野宇宙
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
・映画を見るのも好き
(娯楽系メイン)
・アーケードゲーム最愛
 月華の剣士第ニ幕
・BASARAは伊達いつ推し。
・銀魂は土神寄り。
⋯マイナーカプ好き?
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
HOMEへ戻る
忍者ブログ | [PR]
shinobi.jp