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愛したいのです。愛されたいのです。ただ、それだけなのです。
(けれどわたくしはどうすればそれができるのかがわからない)
(けれどわたくしはどうすればそれができるのかがわからない)
「咲き誇る花は無償の愛だね」
そう言って風来坊は屈託なく笑った。遅い春、桜を追って来たのだとたいしたことでもないようにのたまって、彼は遠慮のえの字もみせず、体ひとつで城にやって来た。というよりも、乗り込んできた。
以前に上田城に押し入ってやりたい放題やった挙げ句、忍頭をぶん殴って来たという武勇伝を小耳に挟んできたが、まさかそれが本当だった上、同じことをしてくるとは思わなかったから、仰天・・・とまではいかずとも、信じがたかったのは事実だ。
さすがに今回は門をぶち壊したり忍を殴り倒したりなんてことはなかったが、門番が泡をくって駆け込んで来た時は、すわ殴り込みかと、城内の者達が色めき立ったものだ。
「なんだ、喧嘩を売りに来たんじゃなかったのかよ」
縁側に腰掛けて茶をすする慶次を見下ろして、政宗は皮肉を込めて言ってみる。まぁそんなの、この男にはぬかに釘なのは判っていたけれど。
「ずーっと北上して来て、あとは最北端で終りかな〜花の命は短くてっと」
節をつけて、高らかに謳うように。この男はどこまでも、誰にも縛られることなく生きている。
「ここに来る前にさ、どこだったか山の中で、すっごい綺麗な桜を見たんだ。他に誰が見るでもないのに、艶やかに咲き誇って・・・風が吹けば花嵐。ありゃあ、見物だったね〜」
「歌人だねぇ。アンタ、甘いのはface だけじゃないってか」
独特の言い回し。可愛いものは可愛いし、綺麗なものは綺麗じゃないか。と、笑って言ってのけられる剛胆さ。何事にも縛られず、誰も彼を縛ることなど出来ない。全く正反対ともいえるこの男を理解は出来ないが、嫌いではない。
「花はさ、誰かに見てもらう為に咲くんだ」
「山ん中で誰も見られないのに、咲いてたんだろう。その桜」
「でも、俺は見たからね。迷ったのも、きっと出会う為だったんだ」
おかしな問答だと自分でも思う。それでも、聞いてみたかった。
この男の目に映るものと、己の目に映るものと、同じものがどう違って見えるのか。
「アンタんトコの右目の旦那もそうだろう?愛情込めて畑耕して、水やって、そうやって育てられた野菜が不味い訳がない」
自分が向けた愛情は、きっとどこかで返ってくるんだ。と、何ともなしにつぶやく横顔は、まさにあのHappy な夫婦に愛されてきた者だと思えた。
愛情を疑ったことはない。父も小十郎も、どんな状態にあっても自分を信じてくれた。けれどそれは愛情。というよりも信頼。といった方がしっくりくるような気がして、それならそれとは違う愛情というのは、どこにあるのか。と。
愛されたくて、けれどそれは、己がこの姿である限りは無理なことで。今はもう、母への思慕など欠片も残っていないのかもしれないけれど、それと繋がる、何かを「愛する」という気持ちを考えると、それが何なのかが判らない。
人が嫌いなんじゃない。慕ってくれる者達を大切だと思う気持ちも本当。けれど時折無性に、空っぽな自分を自覚する。
渇いている。餓えている。ただ愛されたいんじゃない。おそらく自分は愛したいのだ。けれど、その方法が判らない。
「恋の達人にゃぁ、桜も恋人。か」
「?俺が?まさか」
馬鹿言っちゃいけねぇよ。と、豪快に笑って背中を叩く。悔しいことに、この男は政宗よりもガタイが良くて、だから思わず咳き込んだ。
「恋に達人なんていないよ。本当に恋したら、理屈なんかじゃ計れないんだから」
これはまぁ、経験者としての忠告。ってヤツかな。なんて、粋に片目を閉じたりするもんだから、可笑しくて思わず笑いが洩れた。
「Ha!なるほど。アンタたいした男だよ」
「それを言うなら、こぉんな伊達男と、イイ男を惑わすんだから、桜ってやつは本当に罪深い」
「違いねぇ」
まるで雪のように、風に吹かれて降る花弁を見上げて二人で笑う。
「恋に決まった形なんてないんだよ。だからこそ、面白い」
「ヘェ・・・それで、アンタの形はどんなんだい?」
「アンタのは、天下の形をしてそうだね。そうだなぁ、俺は・・・とりあえず今は、最後の一本まで見送ること。かな」
こんなに精一杯、魅せるために咲き誇る姿、最後の一輪まで見なきゃ勿体ない。なんて、屈託のない笑顔で言うものだから・・・
「それも悪くねぇかもな」
ひどく穏やかな心持ちで、最後の一輪が風に舞う姿を思い浮かべたりした。
小咄。本当にとりとめない話ですが・・・ていうかこう、主題が見えない(苦笑)
先日お花見に行ったら桜の花が綺麗だったんです。考えたらこんなに咲き誇る中お花見したのは数年ぶりで、あまりにも見事だったのを思い出したら、そういう感じのをふと書いてみたくなった。という・・・
そう言って風来坊は屈託なく笑った。遅い春、桜を追って来たのだとたいしたことでもないようにのたまって、彼は遠慮のえの字もみせず、体ひとつで城にやって来た。というよりも、乗り込んできた。
以前に上田城に押し入ってやりたい放題やった挙げ句、忍頭をぶん殴って来たという武勇伝を小耳に挟んできたが、まさかそれが本当だった上、同じことをしてくるとは思わなかったから、仰天・・・とまではいかずとも、信じがたかったのは事実だ。
さすがに今回は門をぶち壊したり忍を殴り倒したりなんてことはなかったが、門番が泡をくって駆け込んで来た時は、すわ殴り込みかと、城内の者達が色めき立ったものだ。
「なんだ、喧嘩を売りに来たんじゃなかったのかよ」
縁側に腰掛けて茶をすする慶次を見下ろして、政宗は皮肉を込めて言ってみる。まぁそんなの、この男にはぬかに釘なのは判っていたけれど。
「ずーっと北上して来て、あとは最北端で終りかな〜花の命は短くてっと」
節をつけて、高らかに謳うように。この男はどこまでも、誰にも縛られることなく生きている。
「ここに来る前にさ、どこだったか山の中で、すっごい綺麗な桜を見たんだ。他に誰が見るでもないのに、艶やかに咲き誇って・・・風が吹けば花嵐。ありゃあ、見物だったね〜」
「歌人だねぇ。アンタ、甘いのはface だけじゃないってか」
独特の言い回し。可愛いものは可愛いし、綺麗なものは綺麗じゃないか。と、笑って言ってのけられる剛胆さ。何事にも縛られず、誰も彼を縛ることなど出来ない。全く正反対ともいえるこの男を理解は出来ないが、嫌いではない。
「花はさ、誰かに見てもらう為に咲くんだ」
「山ん中で誰も見られないのに、咲いてたんだろう。その桜」
「でも、俺は見たからね。迷ったのも、きっと出会う為だったんだ」
おかしな問答だと自分でも思う。それでも、聞いてみたかった。
この男の目に映るものと、己の目に映るものと、同じものがどう違って見えるのか。
「アンタんトコの右目の旦那もそうだろう?愛情込めて畑耕して、水やって、そうやって育てられた野菜が不味い訳がない」
自分が向けた愛情は、きっとどこかで返ってくるんだ。と、何ともなしにつぶやく横顔は、まさにあのHappy な夫婦に愛されてきた者だと思えた。
愛情を疑ったことはない。父も小十郎も、どんな状態にあっても自分を信じてくれた。けれどそれは愛情。というよりも信頼。といった方がしっくりくるような気がして、それならそれとは違う愛情というのは、どこにあるのか。と。
愛されたくて、けれどそれは、己がこの姿である限りは無理なことで。今はもう、母への思慕など欠片も残っていないのかもしれないけれど、それと繋がる、何かを「愛する」という気持ちを考えると、それが何なのかが判らない。
人が嫌いなんじゃない。慕ってくれる者達を大切だと思う気持ちも本当。けれど時折無性に、空っぽな自分を自覚する。
渇いている。餓えている。ただ愛されたいんじゃない。おそらく自分は愛したいのだ。けれど、その方法が判らない。
「恋の達人にゃぁ、桜も恋人。か」
「?俺が?まさか」
馬鹿言っちゃいけねぇよ。と、豪快に笑って背中を叩く。悔しいことに、この男は政宗よりもガタイが良くて、だから思わず咳き込んだ。
「恋に達人なんていないよ。本当に恋したら、理屈なんかじゃ計れないんだから」
これはまぁ、経験者としての忠告。ってヤツかな。なんて、粋に片目を閉じたりするもんだから、可笑しくて思わず笑いが洩れた。
「Ha!なるほど。アンタたいした男だよ」
「それを言うなら、こぉんな伊達男と、イイ男を惑わすんだから、桜ってやつは本当に罪深い」
「違いねぇ」
まるで雪のように、風に吹かれて降る花弁を見上げて二人で笑う。
「恋に決まった形なんてないんだよ。だからこそ、面白い」
「ヘェ・・・それで、アンタの形はどんなんだい?」
「アンタのは、天下の形をしてそうだね。そうだなぁ、俺は・・・とりあえず今は、最後の一本まで見送ること。かな」
こんなに精一杯、魅せるために咲き誇る姿、最後の一輪まで見なきゃ勿体ない。なんて、屈託のない笑顔で言うものだから・・・
「それも悪くねぇかもな」
ひどく穏やかな心持ちで、最後の一輪が風に舞う姿を思い浮かべたりした。
小咄。本当にとりとめない話ですが・・・ていうかこう、主題が見えない(苦笑)
先日お花見に行ったら桜の花が綺麗だったんです。考えたらこんなに咲き誇る中お花見したのは数年ぶりで、あまりにも見事だったのを思い出したら、そういう感じのをふと書いてみたくなった。という・・・
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