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六文さんと有栖さんとの小咄絵チャログです。
伊達いつで
伊達いつで
政宗の背中は大きい。いつきよりは大人で、だからそれは当たり前のことなのかもしれないけれど、そういうのとは違った大きさだと思う。
彼はいつきとは違う「侍」で、けれどこれまで見て来た侍と違った。領主なら当然するべきことをしているだけのことだと言うけれど、その当たり前が行われることは少ない。
威圧的な鎧兜も、圧倒するような本数の刀も、それから、恐いほどに鋭いあの眼光も、不敵な笑いも。ただ憎むだけ、恐れるだけの存在でないことを、今のいつきは知っている。
大きな手は、何かを護るため、掴むため。
政宗のような手が欲しいと思った。大切な人達を、村を護りたいから。けれどそれを言ったら、政宗はおかしな顔をした。
困ったような、驚いたような顔。それから言葉を濁して、誤魔化すように頭を撫でられて終わり。
大きな手も、護れるだけの力もない。自分の小さな手に掴めるものなんて限られていて、けれどそれでも、諦めることなんて出来なくて・・・それを歯痒いと思っても、やっぱりこの小さな手では、全てを掴むことなんて出来る訳がない。
それが悔しいのだと言ったら。少し寂しそうに笑っていた。
どんなに大人になったと思っても、手も、体も大きくなったとしても、やっぱり全てを護るのは難しい。だからまずは、出来ることを少しずつ。そう言われて、すぐに納得出来るものではなかったけれど、政宗は茶化すでもなく、ちゃんといつきを見て言ってくれたから。うん。と、頷いていた。今だって、その意味全てを理解している訳じゃないけど・・・
ずっとずっと前に失われた彼の右目。それは病によるもので、傷があるとかそういうのではないらしいが、それでも時々、政宗がそれを押さえるようにして、何か思い悩んだ風にしているのを知っている。
苦しそうな顔。辛そうな顔。それを見ているのが悲しくて、だから、そんなふうに、自分を虐めるかのように、右目を押さえるのをやめて欲しいと思った。
引っ掻いたり、傷つけたりしているのではない筈なのに、何故かそう見えた。
「まさむね」
なんでだろう。怒ったような彼の顔。それがひどく寂しくて悲しい。
「そんな顔すんな」
苦笑して、くしゃりと頭を撫でる手もいつもより少し弱々しく感じられる。
「痛いのか?苦しいのか?」
おらに出来ることがあるなら、手伝うから。
そう言ったら、政宗は小さく笑いかけてくれた。
「じゃあもう少しだけ、そうやっててくれ」
腕に触れるいつきの手に空いた手を重ねて。
「お前の手は、あったかいな」
皆を護ることも、村を護ることも一人では出来ないいつきの小さな手。けれど彼が、政宗が今、それを必要としてくれている。
どんなに小さな手でも、何かを掬い上げることは出来る。出来ることから少しずつ。これもその一歩なのかもしれないと、いつきはその時、ようやく少しだけ判った気がした。
彼はいつきとは違う「侍」で、けれどこれまで見て来た侍と違った。領主なら当然するべきことをしているだけのことだと言うけれど、その当たり前が行われることは少ない。
威圧的な鎧兜も、圧倒するような本数の刀も、それから、恐いほどに鋭いあの眼光も、不敵な笑いも。ただ憎むだけ、恐れるだけの存在でないことを、今のいつきは知っている。
大きな手は、何かを護るため、掴むため。
政宗のような手が欲しいと思った。大切な人達を、村を護りたいから。けれどそれを言ったら、政宗はおかしな顔をした。
困ったような、驚いたような顔。それから言葉を濁して、誤魔化すように頭を撫でられて終わり。
大きな手も、護れるだけの力もない。自分の小さな手に掴めるものなんて限られていて、けれどそれでも、諦めることなんて出来なくて・・・それを歯痒いと思っても、やっぱりこの小さな手では、全てを掴むことなんて出来る訳がない。
それが悔しいのだと言ったら。少し寂しそうに笑っていた。
どんなに大人になったと思っても、手も、体も大きくなったとしても、やっぱり全てを護るのは難しい。だからまずは、出来ることを少しずつ。そう言われて、すぐに納得出来るものではなかったけれど、政宗は茶化すでもなく、ちゃんといつきを見て言ってくれたから。うん。と、頷いていた。今だって、その意味全てを理解している訳じゃないけど・・・
ずっとずっと前に失われた彼の右目。それは病によるもので、傷があるとかそういうのではないらしいが、それでも時々、政宗がそれを押さえるようにして、何か思い悩んだ風にしているのを知っている。
苦しそうな顔。辛そうな顔。それを見ているのが悲しくて、だから、そんなふうに、自分を虐めるかのように、右目を押さえるのをやめて欲しいと思った。
引っ掻いたり、傷つけたりしているのではない筈なのに、何故かそう見えた。
「まさむね」
なんでだろう。怒ったような彼の顔。それがひどく寂しくて悲しい。
「そんな顔すんな」
苦笑して、くしゃりと頭を撫でる手もいつもより少し弱々しく感じられる。
「痛いのか?苦しいのか?」
おらに出来ることがあるなら、手伝うから。
そう言ったら、政宗は小さく笑いかけてくれた。
「じゃあもう少しだけ、そうやっててくれ」
腕に触れるいつきの手に空いた手を重ねて。
「お前の手は、あったかいな」
皆を護ることも、村を護ることも一人では出来ないいつきの小さな手。けれど彼が、政宗が今、それを必要としてくれている。
どんなに小さな手でも、何かを掬い上げることは出来る。出来ることから少しずつ。これもその一歩なのかもしれないと、いつきはその時、ようやく少しだけ判った気がした。
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