細い腕、弱々しい声。掠れるような呼吸は荒く、その者の儚さを、終わりを暗示する。
言葉もなく、彼は傍にひざまずき、最後の声を拾おうとした。その腕を、思いもかけぬほど強い力で掴まれる。
「⋯⋯⋯⋯⋯」
消えてしまいそうな声。かぶりを振れは、爪が食い込むほど強く、腕を掴む手に力が篭る。
お前にあげられるものなんて、今となってはほとんど何もないけれど⋯
いきなさい。お前はいきていきなさい。
その名に縛られることはなく、思うように生きなさい。
遺してやれるものなんて、ほとんどありはしないけれど。
これは、お前の恥などではないのだから。
カナリヤ 金糸雀は空へ舞い踊る。
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