かすがと佐助

はなはさくら、きみはうつくし

　はらはらと散る花弁は、まるでアイツの涙のようだ。


　桜色。桃とは違う、薄紅の色。鮮やかに、艶やかに、どこまでも、どこまでも・・・

「花の命は短いねぇ」
　あれ、これじゃどこぞの風来坊じゃない？とか、内心己の台詞に突っ込みを入れながら、舞い散る花をただ見つめる。感傷的になるなんて、自分らしくないなぁなんて、冷めた自分が見下ろしているのを自覚しながら。
　忍だからなのか、それとも生来の性分なのか。いつだって、どこかに冷静な自分がいて、まるで他人事のように、感情に揺れる自分を見つめている。だからだろうか、あの直情的で猪突猛進な主人や、彼女に惹かれてしまうのは・・・

「なんだか、かすがチャンみたいだねぇ？」
　誰ともなしにそう言えば、背後でがさりと気配が動いた。
「ばっ！キモチワルイことを言うな！」
「え〜、そうかなぁ」
　振り向きもせず、後ろに立つかすがの焦ったような気配に笑う。
「だってかすがチャン、泣き虫じゃない」
　言ってひらりと身をかわせば、つい今しがたまで腰掛けていた枝に光るくない。
「そうやってすぐに頭に血が昇るの、よくないぜ」
　あっという間に懐に飛び込んで、冗談めかして言えば、しなやかな脚が蹴り上げられて顎をかする。
「うわぉ。おっそろしいお御脚だこと」
「それ以上口を開くな！」
　おぞましいっ！と、距離を取って、両方を抱くように腕をさする。どうやら鳥肌が立ったらしい。
「貴様ら武田は、揃いも揃って腹立たしいことこの上ない。何故謙信様は、武田なんぞ・・・」
　ぶちぶち呟いているのをみると、どうやらまた、武田の総大将絡みで面白くないことがあったようだ。
　ここまで私情私憤を隠そうともしない忍もある意味貴重なのかもねぇ。なんて、最近は思う。


　ほら、また泣く。
　泣いてない！
　あのねぇ、俺達、戦忍なのよ？
　判ってる！


　幼い頃の朧げな記憶。すぐに離ればなれになって、でもあんなに弱くちゃ生きてないかもしれないな。なんて、冷静に思えてしまった、可愛くない自分。
　寝返りなんて、珍しいことじゃない。ただあまりにも無計画で、話を聞いた時には驚いた。
　少女は生きていた。幼い頃となんら変わりなく・・・
　本当は知ってる。多分おかしいのは自分なのだと。でもだからこそ、忍という名の殻の中、生きていける。

「織田のお姫さん、見たことあるか」
「・・・浅井の姫か。それがどうかしたのか」
　魔王とはまた違う、どす黒いあの気配。あんなもの、垂れ流してくれるなと叫んでやりたかった。
　あれは、自分と同じだから。
　見たくないのだ。己の醜態を見せつけられているようで。そしてそれを、あの主人も見ているのだと思うと堪らなかった。
　どす黒くて、どろどろとしたやみ・ヤミ・闇・病み・・・
「・・・かすがチャンは、近づかない方がいいよ。これ、一応同郷のよしみでね。忠告」
　馬鹿か貴様は、謙信様の妨げになるなら、私はどんなことをしても排除するんだ。以前とは少しだけ違う、けれどやはり、迷いのないまっすぐな目。
「うん、だからね。そーゆーことにならないことを願うよ」
　へらり。と笑うと、思いっきり眉をしかめられた。ああ、美人さんなのに勿体無い。なんでいっつも、俺にはそんな顔しか見せてくれないんだろうね。まぁ敵同士なんだから当り前なんだろうけど・・・
「殊勝なことを言うな。気持ち悪い」
　あらひどい。茶化しても真面目に言っても、結局投げられる言葉は一緒なのね。なんて、笑う。
「そんな辛気臭い顔をするな。せっかくの花が汚れる」
「・・・へぇ」
　ふい。と視線を背けたかすがの横顔と、ひらりひらりと落ちる花弁と・・・

　あの頃泣いていた少女は、まだここにいる。そして自分も、あの頃と変わらないままに。


　どろどろに溶けて、崩れてしまわないように。この醜い己を誰にも悟られないように。見られないように、殻の中。変わらない。それが自分だから。
　もう一度、かすがを見る。そこに残る幼い頃の面影に、小さく笑った。

　惜しむように、散る桜。はらりはらりと散るその様に、あの頃の少女の涙を思い出す。
　それは決して、ひどく遠い出来事ではなかったのだけれど・・・

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　いきものがかりのアルバムを聴いていて勢いのままに。
　やっぱり忍ーズは三人仲良しが好きなんで、幼馴染みとまではいかずとも、知り合いだったらいいな。とか。コタの外伝ストーリーと比べちゃいやん（苦笑）いやまぁ今回は佐助とかすがだけなんですけども。
　絵チャなどで、佐すが絵とか見せていただいてたのもあって、この二人でした。途中からまたもや脱線。ただ、佐助に関しては個人的にこういう見解があるんですよね、なんとなく。ただ自分でも判ってて、抑え込むんでなく、コントロールしてるっていうか・・・かすがは多分、幸村に似てるんだろうな。敬愛の仕方だけでなく、こう・・・判り易いですし（笑）

　というわけで、久しぶりのバサラ更新でした。しょっぱな（でももう3月）からテンション低くてスイマセンです。でもちょっと調子出て来た・・・かな？