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かわいいひと
他の誰かと比べものになんてならないくらい、誰よりも尊敬する主は、宿敵であるその人の話をする時はひどく楽しそうだ。
まだ今よりももう少しだけ子供だった頃、それが不思議で、何だか面白くなかった。けれど今はそれが少し判る。宿敵というのは何も、常にいがみあうだけのものではないのだと。
だから今は、すこぉしだけ、悔しい気持ちもあるけれど、以前のように一人で腹を立てたり拗ねたりしたりはしなくなった・・・と、思う。
思えばあの頃からの自分を見ていた佐助の気持ちはこんな感じなのだろうか。なんて、考える余裕まで出てくるくらいだ。
「何故!謙信様はあのような・・・!」
ほえ〜。と、なんだか間抜けな声が出てしまって、慌てて口を閉じる。
怒れる獅子・・・ならぬ、美女。嗚呼、そうだ。本当に美女。という言葉が相応しい。
「大体!何故貴様がここに居る!信玄が居ると聞いてわざわざ足を運んでみれば、こんな間抜け面した仔虎だなんて!」
大ハズレもいいところだ!息も荒く本人を目の前にして八つ当たり気味に怒鳴り、手にした大福をそれこそ親の仇かというほどの目付きで睨み付け、かぶりつく。
おおお・・・なんて、思わず感嘆の溜息が出てしまうほどに、絵に描いたような怒りようだった。
「貴様、何を阿呆面している!仮にも城を任された身で!」
これは何に怒っているのだろう。はてさて、女子というものはどうにも判らぬ。お館様がいないと判った途端に怒り出して、名代が自分だと名乗れば貴様ごときがあれに並べられるものかと叱られ、ああもう知らん!まったく貴様ら武田は本当に!と、怒鳴られた。
これは腹でも減ってるのかと、本日のお八つに食べようと思って買っておいた大福を出せば、敵の忍に茶菓子を出す馬鹿がどこにいるんだとやっぱり怒鳴り、毒など入ってござらぬ。と、心配してるのかと思って言えば、お前は本当に馬鹿だと罵られ、結局彼女はその大福をひとつ掴んで、こうしてかぶりついている。
幸村にとって忍といえば、まずは当り前のように傍にいた佐助のおかげか、ひどく近しい存在だった。だから別に、悪さをしないのであればきちんと正面から迎え入れる気満々である(それやられちゃ、俺様達の立場ないっしょ。と苦笑したのは勿論佐助)そういう意味で言えば目の前の彼女は、それに相応しいとは言えない。
何せ敬愛するお館様の永遠の宿敵、上杉の忍・・・しかも謙信直属のくのいちなのだ。
けれど戦場でならともかく、こうして日常で出会うのであれば、何故だか、彼女を他人とは思えないところがある。しかも今回に限っては敵対ではなく休戦のための協定の申し出でもあるから、やはりもてなすのは道理だろう。
勢いで大福にかぶりつき、飲み込むのに苦労している様子にそっと茶を差し出す。細い手がそれをひったくり、ぐっと一気に飲み干して、ようやく彼女は大きく息をついた。
「とにかく、貴様では話にならん」
「しかしお館様は、今日はお戻りにならぬぞ」
ああもう、本当に武田は世話がやける!ぶつぶつとつぶやきながら縁側から立ち上がる。
すっと伸ばした背筋。細身ながらも女性特有の丸みを帯びた身体はすらりと美しい。怒って少し釣り上がった眉も、きゅっと結ばれた唇も、そして、なかなか見ることの出来ない金色の稲穂のような髪も・・・
「そなたは美しいな」
美しいものは美しい。ただそれだけ。だから当り前のように口にしていた。
「なっ」
何を言うんだこの男は、大体そんな言葉や大福ごときで女が皆喜ぶとでも思ったのかこの馬鹿!
矢継ぎ早に放たれる言葉。けれどそれを発する彼女の表情は明らかに普段の、嫌悪を露にしたものとは違っている。
嗚呼、こんな顔も出来るのではないか。
彼女がお館様のことを悪く言うのは正直腹も立つのだけれど、それは彼女が上杉謙信に心酔して、敬愛しているからこそで、それがお館様でないというだけのことなのだ。と、思えるくらいには成長している(本当にそうだったら、俺様ももう少し、楽なんだけどねぇ。とは、やはり佐助の談)
「後日改めて参られよ。その時にはもう少し上等な茶菓子を用意させよう」
それと・・・と、それは当り前のように。多分子供の頃から、佐助等にしょっちゅうそうしてもらっていたからだろう。特に他意や下心があったわけでもなく、ただ自然に、手が伸びていた。
「しっかり食べる女子は良いが、こんなところに餡をつけたままなのはどうかと思うのだが」
頬に触れて、そこについていた餡を拭き取って、さてどうしようか。なんて考える間もなく、いつも己が掴んだ大福を食べ終えた後するように、その指を舐めていた。
「この馬鹿!!!」
乾いた音。少し遅れて頬に点る熱。
「な・・・何をするか!」
呆気にとられて、はっと気付いて言い返す頃にはもうその姿は目の前から消えていた。
「何だというのだ、まったく・・・」
むぅ。と、やり場のない怒りを抱えて腕を組んで・・・それからはっとしたように己の手を見る。
そういえば、女子の顔を断りもなく触ってしまった。おまけに・・・
「うおおおおっ!」
ようやく己のしたことに気付き、叫んでその場で頭を抱える。
「あの馬鹿侍!」
真っ赤になって、苛立ちを隠そうともせず、かすがは木々の間を駆け抜ける。
まるで子供のように、小犬のようにまっすぐにこちらを見ていたあの赤い若侍を思い出し、馬鹿面だ!と吐き捨てるように叫んで・・・
なんとなく思いついてさなかす・・・さな、か、す・・・?(はなはだ疑問)
なんだろう・・・ラブ、でもないし、こう・・・うん(苦笑)
こんなものですが、もし見ていらしたら、いつもいつもお世話になっている有栖様へのお礼に捧げます(押し付ける。とも言う)ていうか伊達いつじゃなくてスイマセン(汗)
まだ今よりももう少しだけ子供だった頃、それが不思議で、何だか面白くなかった。けれど今はそれが少し判る。宿敵というのは何も、常にいがみあうだけのものではないのだと。
だから今は、すこぉしだけ、悔しい気持ちもあるけれど、以前のように一人で腹を立てたり拗ねたりしたりはしなくなった・・・と、思う。
思えばあの頃からの自分を見ていた佐助の気持ちはこんな感じなのだろうか。なんて、考える余裕まで出てくるくらいだ。
「何故!謙信様はあのような・・・!」
ほえ〜。と、なんだか間抜けな声が出てしまって、慌てて口を閉じる。
怒れる獅子・・・ならぬ、美女。嗚呼、そうだ。本当に美女。という言葉が相応しい。
「大体!何故貴様がここに居る!信玄が居ると聞いてわざわざ足を運んでみれば、こんな間抜け面した仔虎だなんて!」
大ハズレもいいところだ!息も荒く本人を目の前にして八つ当たり気味に怒鳴り、手にした大福をそれこそ親の仇かというほどの目付きで睨み付け、かぶりつく。
おおお・・・なんて、思わず感嘆の溜息が出てしまうほどに、絵に描いたような怒りようだった。
「貴様、何を阿呆面している!仮にも城を任された身で!」
これは何に怒っているのだろう。はてさて、女子というものはどうにも判らぬ。お館様がいないと判った途端に怒り出して、名代が自分だと名乗れば貴様ごときがあれに並べられるものかと叱られ、ああもう知らん!まったく貴様ら武田は本当に!と、怒鳴られた。
これは腹でも減ってるのかと、本日のお八つに食べようと思って買っておいた大福を出せば、敵の忍に茶菓子を出す馬鹿がどこにいるんだとやっぱり怒鳴り、毒など入ってござらぬ。と、心配してるのかと思って言えば、お前は本当に馬鹿だと罵られ、結局彼女はその大福をひとつ掴んで、こうしてかぶりついている。
幸村にとって忍といえば、まずは当り前のように傍にいた佐助のおかげか、ひどく近しい存在だった。だから別に、悪さをしないのであればきちんと正面から迎え入れる気満々である(それやられちゃ、俺様達の立場ないっしょ。と苦笑したのは勿論佐助)そういう意味で言えば目の前の彼女は、それに相応しいとは言えない。
何せ敬愛するお館様の永遠の宿敵、上杉の忍・・・しかも謙信直属のくのいちなのだ。
けれど戦場でならともかく、こうして日常で出会うのであれば、何故だか、彼女を他人とは思えないところがある。しかも今回に限っては敵対ではなく休戦のための協定の申し出でもあるから、やはりもてなすのは道理だろう。
勢いで大福にかぶりつき、飲み込むのに苦労している様子にそっと茶を差し出す。細い手がそれをひったくり、ぐっと一気に飲み干して、ようやく彼女は大きく息をついた。
「とにかく、貴様では話にならん」
「しかしお館様は、今日はお戻りにならぬぞ」
ああもう、本当に武田は世話がやける!ぶつぶつとつぶやきながら縁側から立ち上がる。
すっと伸ばした背筋。細身ながらも女性特有の丸みを帯びた身体はすらりと美しい。怒って少し釣り上がった眉も、きゅっと結ばれた唇も、そして、なかなか見ることの出来ない金色の稲穂のような髪も・・・
「そなたは美しいな」
美しいものは美しい。ただそれだけ。だから当り前のように口にしていた。
「なっ」
何を言うんだこの男は、大体そんな言葉や大福ごときで女が皆喜ぶとでも思ったのかこの馬鹿!
矢継ぎ早に放たれる言葉。けれどそれを発する彼女の表情は明らかに普段の、嫌悪を露にしたものとは違っている。
嗚呼、こんな顔も出来るのではないか。
彼女がお館様のことを悪く言うのは正直腹も立つのだけれど、それは彼女が上杉謙信に心酔して、敬愛しているからこそで、それがお館様でないというだけのことなのだ。と、思えるくらいには成長している(本当にそうだったら、俺様ももう少し、楽なんだけどねぇ。とは、やはり佐助の談)
「後日改めて参られよ。その時にはもう少し上等な茶菓子を用意させよう」
それと・・・と、それは当り前のように。多分子供の頃から、佐助等にしょっちゅうそうしてもらっていたからだろう。特に他意や下心があったわけでもなく、ただ自然に、手が伸びていた。
「しっかり食べる女子は良いが、こんなところに餡をつけたままなのはどうかと思うのだが」
頬に触れて、そこについていた餡を拭き取って、さてどうしようか。なんて考える間もなく、いつも己が掴んだ大福を食べ終えた後するように、その指を舐めていた。
「この馬鹿!!!」
乾いた音。少し遅れて頬に点る熱。
「な・・・何をするか!」
呆気にとられて、はっと気付いて言い返す頃にはもうその姿は目の前から消えていた。
「何だというのだ、まったく・・・」
むぅ。と、やり場のない怒りを抱えて腕を組んで・・・それからはっとしたように己の手を見る。
そういえば、女子の顔を断りもなく触ってしまった。おまけに・・・
「うおおおおっ!」
ようやく己のしたことに気付き、叫んでその場で頭を抱える。
「あの馬鹿侍!」
真っ赤になって、苛立ちを隠そうともせず、かすがは木々の間を駆け抜ける。
まるで子供のように、小犬のようにまっすぐにこちらを見ていたあの赤い若侍を思い出し、馬鹿面だ!と吐き捨てるように叫んで・・・
なんとなく思いついてさなかす・・・さな、か、す・・・?(はなはだ疑問)
なんだろう・・・ラブ、でもないし、こう・・・うん(苦笑)
こんなものですが、もし見ていらしたら、いつもいつもお世話になっている有栖様へのお礼に捧げます(押し付ける。とも言う)ていうか伊達いつじゃなくてスイマセン(汗)
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