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バレンタイン小咄
焔野双珠でアフターP3(人それをパラレルという)
焔野双珠でアフターP3(人それをパラレルという)
(注)双珠(女主人公)×荒垣ですヨ。
ああ皆可愛いなぁ。と、にこにこ笑う隣の席の双珠を見て、順平は溜息をつく。
「なんていうかさ、美鶴先輩って、こんな気分だったのかなぁ」
にこにこにこにこ。あれから色々あって、ようやく双珠も休むことなく出席するようになった。高校3年生といえば受験生。皆がピリピリする中でも、彼女はさして焦った様子もない。
成績はそりゃあズバ抜けて申し分ないし、部活動での実績もある。問題があるとすれば、今年の一学期の半分近くを休んでいたことだろうが、出席日数は夏休みの補修で補った。充分に本人の目指す学校は射程内だからというのもあるだろう。むしろ落ち着かないのは周りの人間達だ。
せっかくだからもっと上の学校を目指さないか。という教師陣も少なくない。しかし双珠はそれらを軽く受け流し、最初の希望を貫いている。
今は2月。センター試験も終わっているし、なんとなく学校全体にほっとしたような空気もあり、そんな中にある一大イベント。おまけに三年生は三月になればほぼ自由登校になってしまうから、憧れの上級生に想いを伝える数少ない機会に、学校中、朝から何となく落ち着かない。
ふわふわと落ち着かない男子、そわそわとしている女子。そんな彼等を眺めて、双珠は嬉しそうに、にこにこにこにこと笑っている。
「相変わらずモテモテだよなぁ」
「あ、順平も食べたい?」
「嫌味かよ」
丁度クラスメイトに差し出されたチョコレートを摘んでいた双珠は、それをそのまま差し出す。しかし順平は丁寧にお断りした。
「美鶴先輩もすごかったけど、双珠もすごいわね〜」
苦笑して、ゆかりが双珠の机の横にかけられた紙袋をのぞきこむ。
「こいつ、転校してきて最初の頃、阿呆みたいにチョコ食べてたから、それが印象に残ってんだろうな」
「うん。そうだね」
少しだけ、しんみりとした空気が三人の間に流れる。
「そうだ。順平、良かったらこれから、双珠に付き合ってやって」
「はぁ?何でオレっちが」
「だってヒマでしょう」
びしっと言い切られて、順平は言葉に詰まる。
「後でお礼するから。先輩のプレゼント選ぶの手伝ってくれると嬉しいな」
ていうかバレンタインに何が悲しくて他の男へのプレゼント選びに付き合わなければならないのか。一応順平にだって、オツキアイをしている(と言っても間違ってはないと思う。多分)女の子はいるのだが、いかんせん、彼女は世間の常識からかなりかけ離れた世界で生きていた。ぶっちゃけ不思議ちゃんとも言えるコだから、勝率はあまり期待出来ない。
そして順平自身もそれを今では嫌というほど理解しているのだ。
「ほら、私からもチョコあげるから」
そう言ってゆかりは、同じリボンのかかった箱を双珠と順平、それぞれに渡した。
「ごめんね、双珠。付き合えなくて」
「ううん。ゆかりちゃんも気をつけて帰ってね」
久しぶりに部に顔を出すことになったから。と、ゆかりは慌ただしくカバンを抱えて教室を出ていく。
「・・・で、どこ行くって?」
「ありがとう!」
ゆかりから貰ったチョコレートをカバンに放り込み、溜息をついて順平は立ち上がる。双珠もゆかりのチョコをカバンに入れて、他にも朝から後輩やら同級生やらに山ともらったチョコレートを入れた紙袋を手に取った。
「それで、何にするつもりなんだ」
「うん、昨日先輩に欲しい物はないかって聞いたんだけどね」
バレンタインのプレゼントを直に相手に聞くのか。相変わらず双珠と、二人の先輩である荒垣の関係が順平には掴めない。おそらく付き合っている・・・んだろう。とは思っているが、どうにも双珠と荒垣、それぞれの話を聞いていると、ピンとこないのだ。おまけに双珠は同性のゆかりではなく、何故か順平にこういった相談ごとを持ち込むことが多い。
「荒垣サン、何が欲しいって」
「コロマルの新しい散歩ヒモ」
「・・・・・」
やっぱりおかしい。これが付き合っている男女同士の会話なんだろうか。いや、ズレているといえば、順平の想い人である千鳥もかなりのものなのだが。
「チョコレートにしておけ」
今日であれば、他の何よりも判り易いだろう。とりあえずその辺のスーパーに入って行きそうになる双珠を思いとどまらせ、大分品数が限られてきてはいるが、まだ女の子達で賑わう専用売り場に双珠を放り込んだ。さすがに順平があの中に入っていくのは無謀すぎる。
そんなこんなでシンプルなリボンをかけられた箱を双珠が手にして、ヘロヘロと売り場から戻って来た時には、苦笑した。
まぁ、健闘を祈る。と、いつものように軽く挨拶をした別れ際、双珠から、今日は本当にありがとう。と手渡されたチョコレートは有り難く貰っておいた。
聞き慣れた着信音。ケータイを手に取れば「双珠」と表示されている。
「どした?ちゃんと荒垣サンに渡せたのか?」
双珠と別れてから千鳥と会って、なんと、期待していなかったチョコレートを貰えたので、今の順平はすこぶる機嫌が良かった。
『うん。それはちゃんと貰ってくれた』
しかし電話口の双珠は、何とも歯切れの悪い話し方をしている。
『ちゃんとありがとうって言ってくれて、そんで、今日はバレンタインらしいから。って、皆に御飯作ってくれてた』
双珠と荒垣は今、天田、コロマルと共に以前順平達もいた寮に暮らしている。色々あって、結局あの建物は残されて、今も週に一度は真田先輩や千鶴先輩も戻って来るし、順平やゆかり、風花もしょっちゅう遊びに行っているのでよく判っている。基本的に食事は自分で作ることになっているのも、あの頃と変わりない筈だ。もっとも、そういう方面に頓着がない双珠や、まだ小学生の天田を見兼ねて、荒垣が作ってやることがあるというのも聞いていた。
「マメだなぁ、荒垣サン。それでお前は何でそんなに落ち込んでんだよ」
『デザートに・・・』
「うん」
『すっっごい美味しいフォンダンショコラを・・・!』
ああ、そういうことか。
「作ってくれたんだ」
『うん。明日学校が終わったら、順平達も来いって。準備してあるからって』
声は沈んではいない。確かに彼手作りのデザートは美味しかったのだろう。しかしそうなると双珠の立場としては複雑だろうな。とも思う。
「まぁ、頑張れ」
『うん』
だから、何でオレに相談するのかなぁ。と思ったが、順平は言わないでおいた。
ええと、ちょっと日付け過ぎちゃいましたね。一応、バレンタインネタでした。
ウチの場合、双珠の恋愛ごとの相談役は順平です(笑)
ああ皆可愛いなぁ。と、にこにこ笑う隣の席の双珠を見て、順平は溜息をつく。
「なんていうかさ、美鶴先輩って、こんな気分だったのかなぁ」
にこにこにこにこ。あれから色々あって、ようやく双珠も休むことなく出席するようになった。高校3年生といえば受験生。皆がピリピリする中でも、彼女はさして焦った様子もない。
成績はそりゃあズバ抜けて申し分ないし、部活動での実績もある。問題があるとすれば、今年の一学期の半分近くを休んでいたことだろうが、出席日数は夏休みの補修で補った。充分に本人の目指す学校は射程内だからというのもあるだろう。むしろ落ち着かないのは周りの人間達だ。
せっかくだからもっと上の学校を目指さないか。という教師陣も少なくない。しかし双珠はそれらを軽く受け流し、最初の希望を貫いている。
今は2月。センター試験も終わっているし、なんとなく学校全体にほっとしたような空気もあり、そんな中にある一大イベント。おまけに三年生は三月になればほぼ自由登校になってしまうから、憧れの上級生に想いを伝える数少ない機会に、学校中、朝から何となく落ち着かない。
ふわふわと落ち着かない男子、そわそわとしている女子。そんな彼等を眺めて、双珠は嬉しそうに、にこにこにこにこと笑っている。
「相変わらずモテモテだよなぁ」
「あ、順平も食べたい?」
「嫌味かよ」
丁度クラスメイトに差し出されたチョコレートを摘んでいた双珠は、それをそのまま差し出す。しかし順平は丁寧にお断りした。
「美鶴先輩もすごかったけど、双珠もすごいわね〜」
苦笑して、ゆかりが双珠の机の横にかけられた紙袋をのぞきこむ。
「こいつ、転校してきて最初の頃、阿呆みたいにチョコ食べてたから、それが印象に残ってんだろうな」
「うん。そうだね」
少しだけ、しんみりとした空気が三人の間に流れる。
「そうだ。順平、良かったらこれから、双珠に付き合ってやって」
「はぁ?何でオレっちが」
「だってヒマでしょう」
びしっと言い切られて、順平は言葉に詰まる。
「後でお礼するから。先輩のプレゼント選ぶの手伝ってくれると嬉しいな」
ていうかバレンタインに何が悲しくて他の男へのプレゼント選びに付き合わなければならないのか。一応順平にだって、オツキアイをしている(と言っても間違ってはないと思う。多分)女の子はいるのだが、いかんせん、彼女は世間の常識からかなりかけ離れた世界で生きていた。ぶっちゃけ不思議ちゃんとも言えるコだから、勝率はあまり期待出来ない。
そして順平自身もそれを今では嫌というほど理解しているのだ。
「ほら、私からもチョコあげるから」
そう言ってゆかりは、同じリボンのかかった箱を双珠と順平、それぞれに渡した。
「ごめんね、双珠。付き合えなくて」
「ううん。ゆかりちゃんも気をつけて帰ってね」
久しぶりに部に顔を出すことになったから。と、ゆかりは慌ただしくカバンを抱えて教室を出ていく。
「・・・で、どこ行くって?」
「ありがとう!」
ゆかりから貰ったチョコレートをカバンに放り込み、溜息をついて順平は立ち上がる。双珠もゆかりのチョコをカバンに入れて、他にも朝から後輩やら同級生やらに山ともらったチョコレートを入れた紙袋を手に取った。
「それで、何にするつもりなんだ」
「うん、昨日先輩に欲しい物はないかって聞いたんだけどね」
バレンタインのプレゼントを直に相手に聞くのか。相変わらず双珠と、二人の先輩である荒垣の関係が順平には掴めない。おそらく付き合っている・・・んだろう。とは思っているが、どうにも双珠と荒垣、それぞれの話を聞いていると、ピンとこないのだ。おまけに双珠は同性のゆかりではなく、何故か順平にこういった相談ごとを持ち込むことが多い。
「荒垣サン、何が欲しいって」
「コロマルの新しい散歩ヒモ」
「・・・・・」
やっぱりおかしい。これが付き合っている男女同士の会話なんだろうか。いや、ズレているといえば、順平の想い人である千鳥もかなりのものなのだが。
「チョコレートにしておけ」
今日であれば、他の何よりも判り易いだろう。とりあえずその辺のスーパーに入って行きそうになる双珠を思いとどまらせ、大分品数が限られてきてはいるが、まだ女の子達で賑わう専用売り場に双珠を放り込んだ。さすがに順平があの中に入っていくのは無謀すぎる。
そんなこんなでシンプルなリボンをかけられた箱を双珠が手にして、ヘロヘロと売り場から戻って来た時には、苦笑した。
まぁ、健闘を祈る。と、いつものように軽く挨拶をした別れ際、双珠から、今日は本当にありがとう。と手渡されたチョコレートは有り難く貰っておいた。
聞き慣れた着信音。ケータイを手に取れば「双珠」と表示されている。
「どした?ちゃんと荒垣サンに渡せたのか?」
双珠と別れてから千鳥と会って、なんと、期待していなかったチョコレートを貰えたので、今の順平はすこぶる機嫌が良かった。
『うん。それはちゃんと貰ってくれた』
しかし電話口の双珠は、何とも歯切れの悪い話し方をしている。
『ちゃんとありがとうって言ってくれて、そんで、今日はバレンタインらしいから。って、皆に御飯作ってくれてた』
双珠と荒垣は今、天田、コロマルと共に以前順平達もいた寮に暮らしている。色々あって、結局あの建物は残されて、今も週に一度は真田先輩や千鶴先輩も戻って来るし、順平やゆかり、風花もしょっちゅう遊びに行っているのでよく判っている。基本的に食事は自分で作ることになっているのも、あの頃と変わりない筈だ。もっとも、そういう方面に頓着がない双珠や、まだ小学生の天田を見兼ねて、荒垣が作ってやることがあるというのも聞いていた。
「マメだなぁ、荒垣サン。それでお前は何でそんなに落ち込んでんだよ」
『デザートに・・・』
「うん」
『すっっごい美味しいフォンダンショコラを・・・!』
ああ、そういうことか。
「作ってくれたんだ」
『うん。明日学校が終わったら、順平達も来いって。準備してあるからって』
声は沈んではいない。確かに彼手作りのデザートは美味しかったのだろう。しかしそうなると双珠の立場としては複雑だろうな。とも思う。
「まぁ、頑張れ」
『うん』
だから、何でオレに相談するのかなぁ。と思ったが、順平は言わないでおいた。
ええと、ちょっと日付け過ぎちゃいましたね。一応、バレンタインネタでした。
ウチの場合、双珠の恋愛ごとの相談役は順平です(笑)
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