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・かすがの初心者モンハン記・
<きっかけ編>
「かすが、荷物を置いたら、部屋にいらっしゃい」
敬愛する主人に呼ばれ、学校から帰ったばかりのかすがは、軽く踊るような足取りで部屋へと向かう。
かすがが心から尊敬してやまない謙信は忙しい人で、休みの日はその仕事についていくことも多いが、平日は、学業をおろそかにしてはいけません。と、頑なまでに言い含められており、かすがは多少不本意ではあったが、言われた通り日々真面目に学校に通っている。何より、謙信は仕事のためにあちこちに出ていることが多いので、平日で手伝いを許されるのは金曜の夜くらいなものだ。それが、珍しく週が明けてすぐに、しかも学校から戻るやいなや、呼び出されたのだ。下手をしたら一週間、すれ違いで顔を見られないこともあるから、珍しいよりもまず、嬉しい。という感情が表に出てしまうのは仕方ない。
息を整えてノックをする。すぐに返って来た返事に心を踊らせながら、重い扉を押して部屋へと入る。テーブルの上にはお茶のセット。それと一緒に、書類が積まれている。その中の一冊を見ていた手を止めて、謙信は笑顔でかすがを迎えた。
「久しぶりに二人でお茶にしましょう」
嗚呼、とろけるような微笑みです謙信様!と、心の中で叫んで、それこそくらくらとしそうになるのを必死で止め、促されるままに席に着く。用意されたアフタヌーンティーセットは言うまでもなく申し分ない味で、それに謙信の笑顔、ハスキーな声が加わって、かすがはもう至福。なんて言葉を軽く通り越し、天にも昇る気持ちでふわふわと、その一時を楽しむ。
「学校はどうですか。皆と上手くやれてますか」
「はい!ちゃんと友人も出来ました」
もともと人見知りな上、好き嫌いの激しいかすがは、とにかく謙信の側にいるのが自分の仕事だと言い張っていたのだが、世界を広げ、それを生かして欲しいという謙信の望みに逆らえず、最初はちょっとばかり嫌々、学校に通っていたのだ。それまでのかすがの世界は自分と謙信様だけで、他のものは関係なかったのだが、一風変わった面子の多い学校生活の中で、少しだけ丸くなってきたと最近言われるようになっていた。
「一番の友人は、その、学校の子ではないんですが・・・でもその子は、小学生なのに、すごくしっかりしているんです」
珍しく友人のことを話すかすがに、謙信も満足そうに微笑む。目を惹く金色の髪と、スラリとしていながら、痩せぎすではない豊満な肢体。本人は意識していないが、かすがの容姿は人目を惹く。特に男から見たら、魅惑的なことこの上ないだろう。しかしそんな様子を見た同性からはやっかみを受ける。そんなつもりはないのに、媚びているだのと影で噂され、孤立する。それを受け止めて、逆手に取るなんて芸当はかすがに出来る筈もなく、まっすぐすぎるために、これまで何度も傷ついてきた。それを謙信は知っていたから、心配でもあったのだ。
「良かった。いい顔で笑うようになりましたね」
褒められて、かすがは頬を染める。それは短い時間だが、とても幸せな一時だった。
「そうそう、かすがの学校で流行していると聞いたので、取り寄せてみたんです」
至福の時間も終わる頃、思い出したように謙信は言うと、何やら紙袋を持って来させた。
「丁度、仕事の関係で手に入れられたので、かすがにあげましょう。友人と一緒に遊んでくださいね。勿論、本業を忘れないように」
仕事の関係で。というのに、紙袋の中の包みは綺麗に包装されている。開けてみなさい。と、目で示されて、かすがはそっとリボンをほどいた。
「謙信様、これは・・・」
「貴方の髪の色と同じでしょう」
包みの中に入っていたのは、携帯ゲーム機だった。自分でやったことはないが、最近、クラスの中で持っている者が多いので知ってはいる。
「若虎もやっていると、信玄から聞いたのです。是非友人と仲良く遊んでくださいね」
にっこり微笑まれて、かすがはただ、ありがとうございます!と嬉しそうに言うしかなかった。いや、その笑顔が見られただけで嬉しかったのは本当なのだ。しかし・・・
謙信様。これが流行っているのは主に男子の間でだけです。
とは、最後まで言うことが出来なかった。
「あれ?かすがチャン、それって」
律儀に学校に持って来ていたそれを目敏く見つけたのは慶次だった。
「おお!それ、来週出る新色じゃねーか!」
「really?お、ホントだ」
途端に、元親や政宗を始めとした面子が群がってくる。
「珍しいもの持ってるね〜」
「やかましい!群れるな!これは、謙信様からいただいたんだ」
かすがは知らなかったが、どうやらこの機種は、まだ発売されていないものらしい。新しもの好きな元親が、すでに手を出しそうな勢いで見ているのがまた恐い。
「で、何やってるんだ?」
女の子受けしそうな、かわいらしいキャラクターもののタイトルを挙げるが、かすがはきょとん。と首を傾げるだけだ。
「別に何も。昨日いただいたばかりだからな」
それでも、謙信に貰ったものだからと、付属のケースにきちんと入れて、大事に持って来ていたのだ。
「謙信のやつ、ソフトは自分で買えってのか」
ふと、またもや慶次が目敏く見つける。
「あ〜!あるじゃん。持ってるじゃん、ソフト」
「あっ!こら!」
手早くそれをかすがのカバンから引っ張り出したのは佐助で、そのタイトルを見て、ヘェなんて声を出すもんだから、かすがは頬を赤らめ、それをひったくるようにして奪い返す。
「かすがチャンもハンターデビューするんだ」
「違う!これは、謙信様が、今流行ってるからと・・・」
「だから、やるんだろ?モンハン」
慶次と元親の悪気のない(多分)言葉に、返答に詰まる。
「私は、あまり得意じゃないんだ」
普段からゲームに触らないのに、これはまた、ハードルの高い。と、一同思ったが口にはしない。自分が動かすのは可愛いキャラクターというわけでもないし、初心者の女の子が手を出すのは確かに珍しいチョイスかもしれない。だが、彼等は嫌というほどこのゲームの面白味を知っていた。(勿論、人それぞれなのは判ってはいるが)
「よし、かすが」
ポン。と馴れ馴れしく肩を叩いた佐助を、いつものように怒鳴り返せなかったのは、それ以上に、他の面子からのプレッシャーを感じ取ったからだ。
「「「「モンハンやろーぜ!」」」」
すでに、反論など出来そうにない雰囲気だった。
「そうそう、いつきもやってんだぜ、これ」
政宗の一言で、少しだけやってみようかな。と自分からも思ったのは、かすがだけの秘密だ。
かすがちゃんの初心者モンハン記、スタートです。PSPは3000のイエローで。元々、発売前に練っていた話なので、発売ちょっと前くらいで読んでいただけると嬉しいです。
ちなみにいつきちゃんは、かすがより半年以上前に始めている計算です(政宗が2008年、7月発売だったかの2000のブルー使用の設定なので)
<きっかけ編>
「かすが、荷物を置いたら、部屋にいらっしゃい」
敬愛する主人に呼ばれ、学校から帰ったばかりのかすがは、軽く踊るような足取りで部屋へと向かう。
かすがが心から尊敬してやまない謙信は忙しい人で、休みの日はその仕事についていくことも多いが、平日は、学業をおろそかにしてはいけません。と、頑なまでに言い含められており、かすがは多少不本意ではあったが、言われた通り日々真面目に学校に通っている。何より、謙信は仕事のためにあちこちに出ていることが多いので、平日で手伝いを許されるのは金曜の夜くらいなものだ。それが、珍しく週が明けてすぐに、しかも学校から戻るやいなや、呼び出されたのだ。下手をしたら一週間、すれ違いで顔を見られないこともあるから、珍しいよりもまず、嬉しい。という感情が表に出てしまうのは仕方ない。
息を整えてノックをする。すぐに返って来た返事に心を踊らせながら、重い扉を押して部屋へと入る。テーブルの上にはお茶のセット。それと一緒に、書類が積まれている。その中の一冊を見ていた手を止めて、謙信は笑顔でかすがを迎えた。
「久しぶりに二人でお茶にしましょう」
嗚呼、とろけるような微笑みです謙信様!と、心の中で叫んで、それこそくらくらとしそうになるのを必死で止め、促されるままに席に着く。用意されたアフタヌーンティーセットは言うまでもなく申し分ない味で、それに謙信の笑顔、ハスキーな声が加わって、かすがはもう至福。なんて言葉を軽く通り越し、天にも昇る気持ちでふわふわと、その一時を楽しむ。
「学校はどうですか。皆と上手くやれてますか」
「はい!ちゃんと友人も出来ました」
もともと人見知りな上、好き嫌いの激しいかすがは、とにかく謙信の側にいるのが自分の仕事だと言い張っていたのだが、世界を広げ、それを生かして欲しいという謙信の望みに逆らえず、最初はちょっとばかり嫌々、学校に通っていたのだ。それまでのかすがの世界は自分と謙信様だけで、他のものは関係なかったのだが、一風変わった面子の多い学校生活の中で、少しだけ丸くなってきたと最近言われるようになっていた。
「一番の友人は、その、学校の子ではないんですが・・・でもその子は、小学生なのに、すごくしっかりしているんです」
珍しく友人のことを話すかすがに、謙信も満足そうに微笑む。目を惹く金色の髪と、スラリとしていながら、痩せぎすではない豊満な肢体。本人は意識していないが、かすがの容姿は人目を惹く。特に男から見たら、魅惑的なことこの上ないだろう。しかしそんな様子を見た同性からはやっかみを受ける。そんなつもりはないのに、媚びているだのと影で噂され、孤立する。それを受け止めて、逆手に取るなんて芸当はかすがに出来る筈もなく、まっすぐすぎるために、これまで何度も傷ついてきた。それを謙信は知っていたから、心配でもあったのだ。
「良かった。いい顔で笑うようになりましたね」
褒められて、かすがは頬を染める。それは短い時間だが、とても幸せな一時だった。
「そうそう、かすがの学校で流行していると聞いたので、取り寄せてみたんです」
至福の時間も終わる頃、思い出したように謙信は言うと、何やら紙袋を持って来させた。
「丁度、仕事の関係で手に入れられたので、かすがにあげましょう。友人と一緒に遊んでくださいね。勿論、本業を忘れないように」
仕事の関係で。というのに、紙袋の中の包みは綺麗に包装されている。開けてみなさい。と、目で示されて、かすがはそっとリボンをほどいた。
「謙信様、これは・・・」
「貴方の髪の色と同じでしょう」
包みの中に入っていたのは、携帯ゲーム機だった。自分でやったことはないが、最近、クラスの中で持っている者が多いので知ってはいる。
「若虎もやっていると、信玄から聞いたのです。是非友人と仲良く遊んでくださいね」
にっこり微笑まれて、かすがはただ、ありがとうございます!と嬉しそうに言うしかなかった。いや、その笑顔が見られただけで嬉しかったのは本当なのだ。しかし・・・
謙信様。これが流行っているのは主に男子の間でだけです。
とは、最後まで言うことが出来なかった。
「あれ?かすがチャン、それって」
律儀に学校に持って来ていたそれを目敏く見つけたのは慶次だった。
「おお!それ、来週出る新色じゃねーか!」
「really?お、ホントだ」
途端に、元親や政宗を始めとした面子が群がってくる。
「珍しいもの持ってるね〜」
「やかましい!群れるな!これは、謙信様からいただいたんだ」
かすがは知らなかったが、どうやらこの機種は、まだ発売されていないものらしい。新しもの好きな元親が、すでに手を出しそうな勢いで見ているのがまた恐い。
「で、何やってるんだ?」
女の子受けしそうな、かわいらしいキャラクターもののタイトルを挙げるが、かすがはきょとん。と首を傾げるだけだ。
「別に何も。昨日いただいたばかりだからな」
それでも、謙信に貰ったものだからと、付属のケースにきちんと入れて、大事に持って来ていたのだ。
「謙信のやつ、ソフトは自分で買えってのか」
ふと、またもや慶次が目敏く見つける。
「あ〜!あるじゃん。持ってるじゃん、ソフト」
「あっ!こら!」
手早くそれをかすがのカバンから引っ張り出したのは佐助で、そのタイトルを見て、ヘェなんて声を出すもんだから、かすがは頬を赤らめ、それをひったくるようにして奪い返す。
「かすがチャンもハンターデビューするんだ」
「違う!これは、謙信様が、今流行ってるからと・・・」
「だから、やるんだろ?モンハン」
慶次と元親の悪気のない(多分)言葉に、返答に詰まる。
「私は、あまり得意じゃないんだ」
普段からゲームに触らないのに、これはまた、ハードルの高い。と、一同思ったが口にはしない。自分が動かすのは可愛いキャラクターというわけでもないし、初心者の女の子が手を出すのは確かに珍しいチョイスかもしれない。だが、彼等は嫌というほどこのゲームの面白味を知っていた。(勿論、人それぞれなのは判ってはいるが)
「よし、かすが」
ポン。と馴れ馴れしく肩を叩いた佐助を、いつものように怒鳴り返せなかったのは、それ以上に、他の面子からのプレッシャーを感じ取ったからだ。
「「「「モンハンやろーぜ!」」」」
すでに、反論など出来そうにない雰囲気だった。
「そうそう、いつきもやってんだぜ、これ」
政宗の一言で、少しだけやってみようかな。と自分からも思ったのは、かすがだけの秘密だ。
かすがちゃんの初心者モンハン記、スタートです。PSPは3000のイエローで。元々、発売前に練っていた話なので、発売ちょっと前くらいで読んでいただけると嬉しいです。
ちなみにいつきちゃんは、かすがより半年以上前に始めている計算です(政宗が2008年、7月発売だったかの2000のブルー使用の設定なので)
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