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注)ちょっとばかし血生臭い感じです。苦手な方はご注意ください。
・政宗といつき
・政宗といつき
あかく、あかく、あかく…この人は、なんて…
「Hey,girl.震えて声も出ないのか?」
悔しいが、言われた通り。まだ心臓は激しく波打って、鼻につく臭いに堪え切れず何度かえづく。それでも槌を握る手は強く閉じられたままで…
「Ah~.そういうことか」
おもむろに正面にしゃがみ込み、大きな手が腕を掴む。
「悪ィな。ちいとばかし汚れてて」
長い指がゆっくりと、いつきの細い指を槌の柄から引き剥がしていく。普段は見えない頭のてっぺんが目線に近い。ふと、鼻をくすぐる臭い。血の臭い。
「Don't move.じっとしてろ」
ぐい。と、頬を指で押し上げるようにして拭う。離れた手についた赤を、いつきはよく知っている。
「こら、擦るんじゃねぇよ。伸びて広がっちまう」
無遠慮にいつきの懐から手拭を引っ張り出し、舌で濡らしてやや乱暴に頬を拭った。
「汚ねぇとか言うなよ。血に濡れた顔なんて見たら、小十郎にReturnさせられっぞ」
それは困る。いつきはおとなしく、されるがままに任せた。
「大したもんだよ。お前は」
震える手を見ないふりして、恐怖と緊張で強張ったことも全部お見通しで、それでも傍にいることを許してくれる。
「政宗も、汚れてんぞ」
ごしごしと、ようやく震えの止まった手で頬を拭けば、眼帯をしているのとは逆の頬に一筋の赤い線が描かれる。
しまった。と思ったが、政宗は笑った。
「やっぱりたいした度胸だ」
血に濡れた手、返り血を浴び、蒼い衣には黒く濁った染みがいくつも見える。蒼は政宗が好んで使っている色だ。けれど…
「おめぇさんには、赤も似合うだな」
それは、ひどく生ぬるく臭う、決して胸を張って威張れるようなものじゃない。血の赤が似合うだなんて、どこかのおかしな輩じゃあるまいし、誇れることなどではない。畏れにも似た、感嘆。
「伊達男に似合わない色があるとでも?」
唇の端を軽く上げ、強い光を宿す瞳を細め、皮肉めいた表情を浮かべて…
彼は嗤った。
一応、こちらも外伝というか、こぼれ話というか…ちょっと血生臭いですが、これからの展開に少しだけ触れてみた感じです。久し振りの更新がこれって…(汗)
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