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徒然と小咄など。現在BASARA2メイン。 かなりネタバレや捏造もございます。御注意! あくまでも個人のファンサイトです。 企業様とは関係ありません。
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おにのひだりめ 其の弐(完結)




「アニキ、あのお侍、本当に馬でここまで来たんですかね」
「ああ?そりゃあそうだろう」
「でも、いくらなんでも奥州からここまで・・・」
「だから、一人だったんだろうよ。他のヤツラはさて、追い付いてくるのかね」
 面白がるように笑う元親の言葉に、部下達は顔を見合わせる。
「ほとんど眠らず、朝から晩まで走り通したぁ、おそれいった」
 だから、騒いで起こすんじゃねぇぞ。と言えば、一斉に返ってくる返事。それは屋敷を震わせたが、幸いにも奥で休んでいる竜には響かなかったらしい。


「政宗、一人だけで来たのけ?」
「いや、供は連れてたんだがな、とりあえず俺だけ先に来た」
 正確には、他の誰もが彼について来られなかったのだ。伊達軍の者達は皆、乗馬が達者だが、中でも政宗は多少の暴れ馬もいなせるほどの腕前の持ち主で、そんな彼が本気で馬を走らせたら、正直、ついて来られる者はいない。側近の片倉小十郎なら、多少遅れは取ったとしても、ついて来ただろう。しかし政宗は彼に他の者達を連れて来るようにと命じてある。
「また小十郎さを困らせただか」
 困ったお人だ。そう言ういつきの傍に片腕を枕にしてごろりと横になる。
「いつきお前、最近小十郎に似てきたな」
「そうけ?」
「ああ。とにかく、しばらく寝かせてくれ。ここに来るまでほとんど寝てねぇ」
 殿様にあるまじき大きな欠伸をひとつ。それを見て、いつきは呆れたように目を丸くした。
「まぁた無茶して、小十郎さに叱られたって知らねぇぞ」
「いいんだよ。勝負に負けるわけにはいかねぇんだから」
 それで、そっちの船旅はどうだったんだ?と言えば、いつきは興奮したように、ここ数日の船の上での出来事を語る。そんな嬉しそうな少女の様子を見ながら、政宗は襲ってくる眠気に目を閉じた。
「政宗?ああ、寝ちまったんだな」
 本当に、お侍さんてのは判んねぇなぁ。と苦笑して、いつきはそっと、その頭に触れる。
 殿様の頭に触れるなんて不遜なこと、そうそう出来ることではない。けれど今は、何の警戒心も見せずに畳の上に転がって眠る政宗を、ちょっとだけ可愛いと思ってしまった。
「おらのがずっと子供なのにな」
 可笑しくて、くすくすと忍び笑いを洩らす。奥州の王も、西海の鬼も、いつきよりもずっと大人なのに、時々子供みたいだと思うようなことをする。それを思うと、なんだか彼等がひどく愛しく思えてしまうから不思議だ。



 夜の砂浜に賑やかな声が響き渡る。普段は真っ暗な海を煌々とした灯が照らし、打ち寄せる波の音をざわめきが消していく。
「随分と派手なPartyだな」
「おう、やっと起きて来たのか」
 ゆっくり休めたのか、と言えば、おかげさまで。と、答える。浜辺には立派な宴会場が出来上がっていた。
「政宗」
 駆け寄ってきたいつきの頭を撫でて、で、と元親に向き直る。
「もう準備はいいのか」
「おうよ。野郎共!」
 割れんばかりの歓声が上がる。たくさんの料理と酒が彼等の前に並べられ、賑やかな宴が始まった。


 浜辺に一人、いつきは暗い海を見つめていた。
 少し離れた場所で行われている宴はまだまだ落ち着く様子はなく、ひとまず腹いっぱいになったので、酒の呑めない彼女は一人、浜辺の散歩と洒落こんだのだ。
 本当は政宗達と一緒の方が楽しいかとも思ったのだが、彼等は酒を呑んでいつきには判らない難しい話をしている。生憎と歳の近い子供もいないから、一人で散歩をしながら、時折浜辺で光ったものに駆け寄って、それがきれいな貝だったりすると、大事そうに拾い上げる。
 昼間は真っ青で美しかった海も、夜の闇の中では真っ暗で恐いものにも見える。幸い、きれいな銀色の月が昇っているから、それでもその暗い海は美しく見えた。
「よお、おちびちゃん。一人で歩いてると、攫われちまうぞ」
「そしたら助けてくれるだか?」
 あたぼうよ!と、カラカラ笑う西海の鬼・・・元親を振り向いて笑う。
「悪ィな。呑めねぇとつまんねぇだろう」
 ううん。と、首を横に振って、また海を見る。
「穏やかな海だべ」
 いつきの知っている海は、白にも近い青と、深い深い黒にも近い青。打ち寄せる波は厳しく、冬にもなれば、灰色の空と、それを映したような海。冷たく、厳しい印象の強いものだったから。あんなにも透き通って、美しく明るい青と、柔らな潮風、踏み締める砂までが違うものに感じられる。
「そうだな。それでもやっぱり、海なんだ」
 穏やかに見えるこの海だって、ひとたび顔を変えれば人など太刀打ちの出来ないものとなる。それを知らない者は、そこで暮らしていけない。
「?兄ちゃん、何か・・・」
 遠い沖を見ている元親の横顔を見上げ、いつきは首をかしげる。夜の闇のせいだろうか。なんだかいつもの彼とは少し違って見えて・・・
「?・・・ああ。悪ィな、ついつい楽しくて、ハメ外しちまった」
 大きな手が顔の左半分を隠す。
「別にいいだよ。見られたくないなら、おら見ねぇし」
「そうか?」
 じゃあ、いいか。と、覆っていた左手を離せば、普段は見ることの出来なかった彼の顔の左半分が露になる。
「兄ちゃんの目は、怪我しただか?」
「いや。ほら、傷なんてねェだろ」
 指し示すそこには確かに傷ひとつなく、きれいなものだ。けれど何故隠すのか。しかしいつきはそれを口にするほど浅はかではなかった。
 いつきの知る、一番身近な隻眼の男、政宗は、幼少の頃に病で片目を失ったという。失われた右の目があるべきだった場所には何もなく、見てて気持ちのいいもんじゃない。と、彼は難しい顔でそう言っていた。
「そんな顔すんなよ。オレはあの独眼竜とはちぃと事情が違うからな」
 別に、気にすることなんてないんだぜ。と笑って、元親は直に砂浜に座り込んだ。いつきもなんとなく、同じように隣に座る。
「もしお前さんが気味悪くねぇっていうんなら、ほら、よっく見てみな」
 左目を示す。露になっているその顔立ちは荒々しさを感じさせつつも精悍で、政宗のような鋭さはないが、屈託なく笑う顔は逆に少々愛嬌があるようにも見える。
「おらが見てもええだか?」
 おうよ。と返って来る返事に安心して、これまで隠されていた左目を見る。失われているわけでもなく、閉じられたり、傷ついているわけでもない左目は今しっかりと開かれていて、時折瞬きをしながら、じっと見つめるいつきの動きを追うように動いている。
「きれいな色だべ。まるでお月さんだ」
「ありがとうよ」
 開かれた彼の左目は、右目とは確かに違っていた。
 薄い、金にも銀にも近いような色。明らかに彼の右目とは違う色。その中にいつきを映し、動いていたのを見れば、見えないというわけでもなさそうだ。
「きれいなのに、なんで隠しちまってるんだ」
 勿体ねぇ。と言えば、そうか、勿体ねェか!と、豪快に笑う。そうしていつきの頭を乱暴にワシワシと撫でた。
「この目はな、お陽さんの光じゃあ強すぎるんだと」
 強すぎて、潰れちまうんだとさ。と、たいしたことでもないように元親は言う。
「そんなだから、オレはガキん時はずっと屋敷の中だった。昼間外に出られるのは、曇ってる時か雨の時か・・・お陽さんも、海も、昼間だと、この目が焼かれちまうんだ」
「お前ェさんが・・・?」
 照りつける太陽の下、海に浮かんだ船の上。あそこほど、彼に似合う場所はないというのに。
「ああ。だから、それさえ隠しちまえばいいんだって気付いた時にゃあ、己の阿呆さ加減に呆れたね。なんでもっと早くに気付かなかったんだ。って」
「お日様が、好きなんだな」
「ああ。お陽さんも、海もな。だからオレは、オレ達は海に出るんだ」
「なぁに人のいないうちに仲良くやってんだよ」
 後ろから気配もなく、突然の声に驚いて振り向けば、やや頬を上気させた政宗が立っていた。
「お、なかなか鬼らしい面構えじゃねぇか」
「言ってくれるねぇ」
 猫の仔じゃあるまいし、金目銀目なんて珍しい。なんて、政宗はたいしたことでもないように言う。政宗。と、いつきが思わずとがめるように声を上げれば、Ha!と笑い飛ばされた。
「普通の人間じゃねぇから、鬼なんだろうが」
「おうよ。だからオレは鬼なんだよ」
 夜の、月の明かりの下でのみ、本来の己の姿を晒すことが出来る鬼だ。と、楽しそうに笑う元親と、それじゃあ今度はその鬼に付き合って貰わにゃぁな。と、手にした徳利を投げて寄越した政宗は、それぞれいつきを挟んで座り込む。
「二人とも、酒臭えだ」
 むぅ。と眉をしかめたいつきの頭を左右から撫でて、二人は再び酒盛りを始める。
 そんな二人に挟まれながら、いつきは暗い海と、その上に昇る明るい月を見て、しょうがねぇなぁ。と溜息をついた。






 元親の左目を思いっきり捏造(汗)なんていうかこう、アニキってお日様の下が似合ってるよね。というところからだった気がします。もとは。
 だからこそ、そんなアニキの左目が、日光に弱いとかってどうかな〜とか・・・(汗)髪が銀だから、瞳も銀っぽい感じ?とか、考えるのは楽しかったです。
 ここまで妄想におつき合いくださってありがとうございました!

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