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徒然と小咄など。現在BASARA2メイン。 かなりネタバレや捏造もございます。御注意! あくまでも個人のファンサイトです。 企業様とは関係ありません。
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おにのひだりめ(未完)

・8/23に加筆。もうちょっとだけ続きます。
・9/4に台詞を一部手直し。

「ふわぁ・・・!」
 目の前に広がる青い青い海原に、いつきは感嘆の声を洩らす。
「どうだ!きれいなもんだろう?」
 誇らしげに胸を張り、西海の鬼は水平線を指さした。
「海に沈むお陽さんはまた、格別なんだぜ」
 すごいすごいと喜んでいる少女を甲板に見下ろし、舵を切る。
「すげえなぁ、おら、こんなに青い海は初めてだぁ」
「なんだ、ちびっこは海を見たことなかったのか?」
「うんにゃ。海は知ってる。けど、この海はおらの知ってる海とは全然違うだよ」
「ああ」
 納得する。実際にその目で確かめたわけではないが、奥州へ向かう途中に通ってきた海を見ているから、いつきの言う意味がすぐに判った。
「外海に比べりゃあ、ここは随分と穏やかだからな」
 波の荒い外の海に比べて、ここ瀬戸内の海は比較的穏やかだ。気候も随分と違うから、これが同じ日本なのかと、いつきはこちらに来てまずそう言ったものだ。
「こんなにあったかい青い色した海、初めて見ただ・・・」
 小さな客人はこの短い船旅を随分と楽しんでくれているようだ。子供は泣かれると苦手だが、こうして素直に喜んでいるのを見るのは嫌いじゃない。
「せっかくだからな、色々見せてやるよ」
「うん!」
 きらきらと眩しい光が、海の青を反射していた。





「お帰りなせぇ、アニキ!」
「おう!」
 陸に着けば、元親の部下達が早速出迎えに出て来る。ここでは彼を呼ぶ者は皆、名前ではなくアニキと呼ぶ。勿論、それに絶対の信頼と敬愛が込められているのは言うまでもない。
「お嬢ちゃんも、海はどうでした」
「すごかっただ〜!こっただきれいであったかい海があるなんて、おら知らなかっただよ」
 一足先に船を降りた元親が手を伸ばす。いつきは差し出された手を取ると、軽やかに地面に降り立った。
「そりゃあそうさ!ここはアニキと俺達の海だからな!」
「旨い魚も捕れるんだ。お嬢ちゃんにもたっぷりごちそうしてやらにゃ」
 誇らしげな元親の部下達に、いつきも頬を緩ませる。
「留守中、何か変わったことはなかったか」
「ああ、それでしたら・・・」
 部下の一人が言い終える前に、その後ろにいた者達がざっと左右に割れるようにして道を開く。

「おいおい、こっちの客人はほっぽらかしか?たいした部下の教育じゃねぇか。西海の鬼」
 鎧兜をまとってはいないものの、その腰に帯びた六本の刀と、整った顔立ちの右半分を隠すようにかけられた鉄の眼帯、そして何より、彼自身の放つ上に立つ者独特の覇気は充分すぎるほどの威圧感で、元親の部下達を命ずることなく下がらせる。
「政宗!」
「何だ、思ったより早かったな。あと七日はかかると思ってたんだが」
「Ha!馬鹿ぬかせ。言っただろう?負けやしねぇってな」
 睨み合い、軽口を叩き会う彼等の間には見えない緊張感が漂う。けれど当の本人達は至って楽しそうなのだから判らない。
「奥州の奴等は乗馬が達者ってのは、ウソじゃなかったみてぇだな」
「こちとら物心ついた頃から手綱握ってんだ。てめぇの物差しで計るなって言ったろう?」
 向かい合って言い合う二人は鏡映しのように片目を覆っている。政宗は右目、元親は左目。この戦ばかりの世にあって、体に傷を持つ者は少なくないが、政宗のそれは、幼少時の病によるものだと言う。
 しかしまた、面白いように根の部分が似た二人が、まるで逆の瞳を閉ざしているというのは不思議な巡り合わせとでもいうのだろうか。
「まぁ、せっかく奥州なんて山奥から来てくれたんだ、ゆっくりして行け」
「抜かしやがれ。ウチが山なら、てめぇんトコは海しかねぇじゃねぇか」
 聞いているだけだと馬鹿にしあっているようだが、本気でないのは実際に二人の顔を見てみれば判る。
「なぁなぁ、おら、お腹減っちまっただ」
 ぐい。と、二人の腕を取って、いつきが間に割り込む。西海の鬼と奥州の竜はそんないつきを見下ろして、同時に吹き出した。
「おう、旨いもんいっぱい食わせてやるよ」
「うん!」
「勿論、酒もあるんだろうな」
「阿呆ぬかせ。そんなの当り前だろうが!」
 少しずつ、彼等を中心に笑いが広がっていく。白い砂浜の上、いくつもの声が弾けるように笑い、青い青い海と空へと消えていった。






もうちょっとだけ続きます。
結局記事ふたつになってしまいそうです。

9/4に一部台詞を手直ししました。西の方ではあまり「馬鹿」とは言わない。というような話を以前していたのを思い出しまして・・・四国は実際はどうなのかな?と思ったりもしたんですが、読んだ感じでもこっちのがしっくりくるかと。

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