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徒然と小咄など。現在BASARA2メイン。 かなりネタバレや捏造もございます。御注意! あくまでも個人のファンサイトです。 企業様とは関係ありません。
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君とデート 前編

4月30日に一部加筆。長くなってしまったので前、後編に分けます。

「なぁ、今度の土曜空いてるか?」
 帰り仕度をしているところで元親に声をかけられ、手を止める。やや高い位置から見下ろす目と視線が合った。
「What? 何だよイキナリ」
「や、どっか行かねぇかって」
「Ha. どうしたんだ、随分と殊勝なもの言いじゃねぇか」
 いつもだったら、今度どこどこへ行こうぜ!と、有無を言わせぬ勢いで言う彼が、なんだか言い出しにくそうに言っているのは珍しい。ガタイがいいのも手伝って、ひどくアンバランスだ。
「どこかも何もなかろうが」
 げ。と、カエルの潰れたような声を上げて元親が振り向いた先には元就がふんぞり返って立っていた。
「貴様、また掃除をサボるつもりか?もうとうにチャイムは鳴っておるぞ」
「ああ、今週お前等なんだ」
 クラスの半分ずつ。いくつかの斑に分けて、週ごとに掃除を受け持つ。政宗は先週それを終えて、今週は放課後、自由の身だ。
「で、どこ行くつもりだったんだ?」
 とりあえず聞くだけ聞いてやる。元親は、助かった。というように元就から視線を逸らした。
「科学博物館」
「そりゃまた随分と・・・どっかで頭でも打ったのか?」
「伊達、こやつの言葉に耳を貸す必要はない。こやつはただ、限定モデルに興味があるだけだ」
 限定モデル?と首を傾げれば、ばっか、違ェよ。と、元親は息巻いて反論する。
「そりゃあ興味ないって言えばウソだが、それよりも!すげーのが来るんだって」
 ああ。と、政宗も納得して溜息をついた。元親のメカ好き・・・いや、機械狂いは有名だ。なんたって、車から業務用ロボットまで節操がない。この間など、企業相手の機械展に行ってきた。と、嬉しそうにパンフレットを広げていた。そういえば。
「悪ィな。土曜はPrevious engagement があるんだ」
「何だ、それじゃあ仕方ねぇな」
 じゃあ元就でいいや。と言って振り向けば、腕を組んで笑う元就がそこにいて・・・
「我が貴様ごときのために休日を割くとでも?」
 ああそうでした、スンマセン。と、ヘビに睨まれたカエルのように小さくなって、元親はそそくさとその場を立ち去る。本当に、なんでこの二人がよく一緒にいるのかが判らない。
 ごしゅーしょーさま。と呟いて、政宗は荷物をまとめて教室を出た。



 いつきの携帯電話は女の子らしい丸っぽいフォルムのピンク色だ。しかしそれにはやや不釣り合いに見える飾りをつけている。それは蒼い石に金の色で細かい竜の細工が描かれていて、元は根付だったものを、ストラップに直したのだという。
 今時、小学生でもケータイを持つ時代なんだねぇ。と、慶次は笑っていたし、何と、某、携帯電話は滅多に触らせてもらったことがないでござる!と、幸村は少し羨ましそうにそれを手にして、しげしげと眺めていたものだ。
 子供が携帯電話を持つのは良いことも悪いことも色々とあるようだが、いつきの場合は保護者である小十郎がずっと家にいる訳でもないので、必要にかられて買い与えられた。
 それでもやはり、それは子供にとって一種の憧れのようなものを含んでいるのは確かで、メーカーだけは選ばせては貰えなかったが、どれでも好きなのにしていいんだぜ。と、一緒に連れて行って貰った店で、真剣にそれらと向き合って選んだ。
 もっとも、いつきは主に見た目のみを見ていたのだが、一緒について来てくれた政宗は店員に何か色々と質問をして、機能や何かを確かめていたようで、さすがにあまりにもたくさんの種類に頭を悩ませていると、この中ならどれがいい?と、選択肢を絞ってくれた。
 政宗が選んでくれた種類の中で、丸くて可愛いそれを一目で気に入って決めて、まず最初に政宗と小十郎のケータイの番号、それから家の番号を入れた。後でメールのやり方も教えてやるよ。と、政宗は笑っていて、それから色々と教わって、今では普通に電話をかけるだけでなく、メールのやり方も覚えた。
 ちゃんと学校にいる時には音が出ないようにしているし、メールが出来る方がいつでも連絡が取れるというので、小十郎からの伝言はもっぱらそれに頼っている。

 最初、いつきのケータイのストラップは、シンプルだが可愛い雪だるまだった。季節はずれだと笑われても、マフラーを巻いて耳あてをしたその雪だるまは愛らしくて、だから最初に見た時から気に入っていた。
 今つけているのは、もともとは政宗のものだったものだ。細かい細工の竜は雄々しく、蒼い石はきれいで、政宗が持っていたものだから、おそらく品はいい。それをきれいだと言ったら、じゃあやるよ。とあっさりと手放した。それまで慶次がいいな〜と言っても、誰がやるか。と言っていたのに・・・
 それが政宗にとって大事なものなら、ただ貰うのは気がひけた。いつきが大事にしてくれるならいいんだ。と言われたので、お気に入りだった自分の雪だるまと交換したのだ。政宗のケータイはクールなデザインの渋い青で、いつきの雪だるまをつけるとだいぶ可愛らしくなってしまったのだけれど、政宗は今でもそれをつけてくれている。

「何だよそれ、だっせぇ」
 帰り道、メールに気付いて取り出したケータイを見た途端、蘭丸がそうのたまった。
「ださくなんてねぇ!大事なもんだ」
 普段は馬鹿にされても軽く流すのだが、こればかりは許せないと思った。これは政宗の大事だったもので、今ではいつきの大事なものだ。
「何だよ、女のくせに青いのなんかつけちゃってさ」
 蘭丸の言い分がおかしいのは判っているが、自分だけでなく政宗まで馬鹿にされたようで悔しくて、何を!と声を上げそうになったその時、手にしていたケータイが鳴った。



『あ、いつきちゃん?俺、判る?』
「慶次兄ちゃん?どうしただ、急に」
 それに、何故慶次がこの番号を知っていたのだろう。そんな考えがふと頭をよぎる。
『片倉さんに頼まれてさ。聞いたよ〜今度の土曜、一緒にどっか行く約束だったんだって?』
「あ、うん・・・小十郎さ、お仕事なんだべか」
 あれ?聞いてなかった?おっかしいな〜確かメールしたって聞いたんだけど・・・なんて、慶次が言うもんだから、先ほどのメールをまだ見ていなかったことを思い出した。
「おら、まだそれ見てなかったから。でも何で慶次兄ちゃんが?」
『いや、まつ姉ちゃんがさ、今度の土曜に弁当持ってどっか行こうって言ってたから、せっかくだから、いつきちゃんもどうかな〜って』
 おそらく、気をつかってくれたのだろう。慶次の叔父叔母である利家とまつは、平日昼間をメインにした喫茶店兼食堂をやっていて、慶次も夕方には手伝いに入ったりする。小十郎もよくそこを利用しているらしいから、その時にでもそんな話が出たのかもしれない。
「ありがとな。でも・・・」
 電話の向こうの慶次は何か悟ったのか、少し黙る。それから、じゃあその気になったら遊びにおいで。と、優しく一言残してくれた。
 軽い音を立てて電話が畳まれる。ちょっとだけ溜息をついて、それから思い出してメールを開けば、そこには小十郎からのメッセージがあった。慶次の言った通り、土曜はどうしても外せない用事が出来てしまったとそこにはあって、仕方のないことだと判っていながらも、やはりがっかりしてしまう。
「何だ?フラれたのか?」
 先ほどまでからかうようだった蘭丸の口調も、いつきの様子が変わったのを見て、やや遠慮がちなものに変わっている。それが判ったから、ちょっとだけ笑顔を返してやった。
「仕方ないべ。仕事なんだから」
「・・・お前、えらいな」
 よしよし、と、まるで年上の兄であるかのように、蘭丸は慰めるよういつきの頭を軽く叩く。何だか初めて、二人は判り合ったような気分になり、それから他愛のない話をしながら、途中まで一緒に帰ったのだった。



 土曜日の朝。休みの日だが、いつきはいつもと同じに起きて、小十郎と一緒に朝御飯を食べた。申し訳なさそうに謝る小十郎を、気をつけてと送りだし、それから何となくテレビをつけてぼーっとする。
 いつもだったら宿題をしたり色々と動いているのだが、今日ばかりはなんとなくそう出来ない。宿題は昨日のうちに終わらせてしまったし、本を読もうと思っても、今借りてある分は読み終えてしまった。
 図書館にでも行って来ようか。と思ったその時、玄関の方から聞き慣れた声がした。
「政宗?」
 慌てて立ち上がって玄関を開けに行く。ドアを開けるとそこには、荷物を持った政宗が立っていた。
「ほらいつき、仕度しろ。出かけんぞ」
「え?」
「いいから急げ。Hurry up.」
 訳も判らぬまま、小さなバックにハンカチや財布を入れて、帽子をかぶる。その間に政宗は窓の鍵などを確認して、10分もかからぬうちに二人は家を出た。
「どうしただ、政宗」
「どうって・・・そんなの決まってんじゃねぇか」
 出かける予定だったんだろう?と言われて、ようやく事態を飲み込んだいつきの顔がぱあっと明るくなる。
「どっか連れて行ってくれるだか?」
「おうよ」
 任せとけ。ほら、弁当もあるぜ。と、政宗は手にした荷物を掲げてみせる。いつきは嬉しくて、政宗の空いている方の腕にしがみついた。
「ありがとうだべ!」
 もしかしたら政宗は、小十郎に頼まれたのかもしれない。それでも、いつきは本当に嬉しかった。
「どうする?水族館にするか?」
 もともと小十郎と約束していたのを、やはり政宗も知っていたらしい。確かにそれは楽しみにしていたのだけれど、こんなに天気もいいことだし、弁当もあるというし・・・
「動物園がいいだ!」
 OK. と、政宗は笑って了承してくれる。ここらなら電車で行く方が近いということで、二人はそのまま駅に向かった。





思った以上に長くなってしまったのでふたつに分けます。スイマセン・・・

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