いつきと小十郎と政宗

戦国・・・というか、HEROESの武闘大会なネタで・・・

「あぁん？俺と組みたいって？・・・OK。いいぜ。まぁ副将ってのはちぃとばかし引っ掛かるが、その代わり、ちゃんと後ろで支えといてやるよ」
　そう言って一国一城の主は快く、副将を引き受けてくれた。



　今回の大会は二人一組が原則らしく、一人で勝ち抜くよりは負担も少ないという。しかしそうなるといつきにとっては少しばかり困ったことになった。
　周りを見てみれば、ほとんどが夫婦だったり主従だったりと、同じ軍の者同士で組んでいるようで、それ以外の者達は声を掛け合って、国同士が近い者達がすでに出場を決め始めていた。いつきにはそういう人はいない。同じ一揆衆の仲間に声をかけるのはとてもとても偲びない。何故なら、ざっと見た限りでも出場する者達はケタ違いの実力者ばかりだ。彼等を信頼していないわけじゃない。だが自分はともかく、他の者達を危険に晒すわけにはいかない。何よりも、彼等の中から一人だけを選ぶのはひどく難しいことだった。実を言えば、ここに来る前にそれで一悶着あったのだ。
　誰かに声をかければ、自分ではダメなのかと次々に名乗りを挙げる者が出て来る。皆の気持ちは嬉しいが、それでは埒があかないので、こっちに来れば何とかなる。と、説得して、一人でやって来たのだ。
　しかしやはり、出場者のほとんどが侍で、いつきのような農民は他に見られない。ましてや子供のいつきは侮られてしまう。
　国が近い人ならどうだろうという淡い期待はすぐに消えた。
　越後の軍神にはあのきれいな忍の姉ちゃんがいるし、唯一、侍の中でもいつきが比較的話しかけ易い蒼いお侍の傍には、彼の右目と称される切れ者の側近が控えていた。
　それでもいつきは諦め切れなかった。諦め切れなくて、うろうろと辺りを見回していたら、件の蒼いお侍・・・伊達政宗が声をかけてきた。だからもうダメで元々と、思い切ってお願いしてみたのだが、案外あっさりと彼は了承してくれた。



「どうした？」
　声をかけられて振り向けば、頬に傷のある強面の男が立っている。
「こじゅろうさ」
「なんだ、政宗様が出ているのか？確か大将はお前さんだったろう？」
　こくりと頷く。二人一組、交代は自由ということで、いつきはいつでも出られるように槌を握り締めているが、舞台上の政宗は全く危なげもなく、今もまたひとつ、試合を終えたところだった。
「おら、さっきちょっと失敗しちまって、そんで政宗に代わってもらったんだけども」
「ああ。そういうことか」
　威勢よく相手を挑発している主を見て、小十郎は苦笑する。
「済まねぇな。まぁ、嫌でなければ、しばらくは好きにさせてやってくれねぇか」
「うん。おらはええけど・・・」
　くしゃり。と、大きな手が頭を撫でてくれる。困ったお人だ。と苦笑しながらも、どこかその顔は楽しそうだと、見上げたいつきは思った。



「んで、結局副将の俺がほとんど倒しちまったじゃねぇか」
「だども、政宗が代わってくんなかったんだべ！」
「おーおー、何だ、俺が悪いってのか？」
　むにぃ。と、いつきの頬を摘んで引っ張って。政宗は意地悪く笑う。
「なにするだ〜！」
「それはともかく、こんだけ健闘したんだ。礼のひとつも貰わにゃあ割に合わねぇな」
　それこそ、kissのひとつでもくれてもいいんじゃねぇか？なんて冗談めかして言うのを聞いて、隣にいた小十郎の眉が少しだけ上がる。
「きす？」
　接吻のことだ。と言えば、何言うだ、はんかくせ！と、頬を赤らめていつきは膨れっ面をする。それを見て政宗はまた笑い、いつきはますます頬を膨らませるのだった。

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ええと、HEROESの大会、ウチでは筆頭が大将でいつきちゃんが副将でした。筆頭一人で奮闘してました（苦笑）

実を言うと有栖様宅の絵版を拝見して、思わず思いつくままに書いてしまったのですが・・・勝手に申し訳ありません。問題あるようなら即下ろしますので（汗）もしよろしければ有栖様、貰ってやってください。いつもいつも本当にお世話になっております。ありがとうございます〜＞私信
ところで「はんかくせ」で良かったのかな・・・？確か青森方面の言葉だったと思ったのですが、間違ってたらスイマセン（汗）